2011年 沖縄県の産業振興と中小企業振興をはかるための陳情

沖縄県議会議長 高嶺 善信殿 平成24年3月13日

(1)中小企業に対する金融機関の融資について

 ■陳情主旨

金融機関の中小企業への融資姿勢についてのアンケートは、この4年間連続して行われ、昨年は「これまでと変わらず親切に対応してくれる」が上昇しており、「貸し渋り」についても減少していることから、金融機関の中小企業への対応が改善されてきている、としていたが、今年のアンケートからは、「親切に対応してくれる」が減り、逆に「貸し渋りを感じる」が増えており、「金融機関の姿勢が厳しくなった」という実態が浮き彫りになっています。
一方、金融機関に対する主な意見では、「金利が他府県と比べて高すぎるので、改善へ向けて努力して欲しい」「技術、人物、アイディアを評価しての貸付優遇すべき」「地元の零細企業をサポートしてこそ地銀の役割、存在意義がある」「金融機関は担当者が変わるが、せめて3年は同じ人で対応してほしい」、などです。県信用保証協会に対する主な意見では、「保証協会は、もっと企業側に密着し情報を直に取材すべき」「金融機関が承諾した借入金額について信用保証協会が減額するのは困る、金融機関との信頼が無に帰す」「保証協会は代弁済の関係か、厳しくて借入ができない」、などです。両者に対する意見では、「100%信用保証協会の保証になったことで、金融機関は機械的にスコアを計算してクリアできない案件は、保証協会丸投げになっており、問題だ」、との指摘もあります。
こうした中小企業・利用者の声をふまえて、次のことを陳情します。

 ■陳情項目

  1. 金融機関の姿勢が、以前に比べて厳しくなっており、経営環境が厳しい時にこそ、金融機関の目的の一つである金融の円滑化を図るよう金融機関に要請してください。
  2. 金利に対する不満が多く、ゼロ金利時代に即した金利にするよう金融機関に要請してください。
  3. 信用保証協会の審査が厳しすぎる、申し込んでも減額された等の声が寄せられており、これらをふまえ、金融機関と信用保証協会の二重審査を緩和してください。

(2)中小企業憲章について

 ■陳情主旨

政府が一昨年6月に閣議決定した「中小企業憲章」を国民全体の認識とし、その内容を実現するために、次のことを政府・関係機関に働きかけてください。
つきましては、県議会として次のことを政府・関係機関に働きかけることを決議されるよう陳情します。

 ■陳情項目

  1. 中小企業憲章を閣議決定にとどめず、国民の総意とするため、国会決議をめざすこと。
  2. 首相直属の「中小企業支援会議(仮称)」を設置し、省庁横断的機能を発揮して、中小企業を軸とした経済政策の戦略立案を進めること。
  3. 中小企業担当大臣を設置すること。

(3)一括交付金について

 ■陳情主旨

県が国に求めている「一括交付金」の内容について聞いたところ、「知っている」と「知っているがあまりよくわからない」をあわせると8割を超えており、詳しい内容までは知らないが、多くの人が一括交付金については知っていることになります。また、交付金の実施については、5割弱が「賛成」しているものの、3割強が「分からない」としているのは、内容があまり知らないことから来ていると見ることができます。また、一括交付金の実施あたっても、多くの意見・要望が出されています。主な意見では、「県や市町村がお互いの思惑で予算確保をするのではなく、県民、市町村民に何が必要かを見極めた話し合いで交付実施されるべき」「各市町村長と議会議員との話し合い密にすること、特に市町村への交付方法を公平にしないと今までの国と同じになる」「もっと市町村の実態調査と議論を表にだすべき」など、県と市町村との関係に対する意見や、「沖縄の状況を分かっている者(経済団体や議員等)を集めた第3者機関を県、市町村単位で設立し、その中で使い道を議論して欲しい」「資金流用の内容を明確に詳細、表示、報告の徹底」「県内の事業については、県内企業で受ける仕組みを確立して欲しい」など、交付金の内容やあり方についての意見もだされています。さらに、「一括交付金の国に対する戦略・戦術がなさすぎる。待っているだけでは勝ち取れない」「本当に実施されるのか不透明さが残る」「今までと180度違う方法で市町村が効果的な運営ができるか疑問」など、県としての取り組み姿勢や危惧する意見とあわせて、「一括交付金に頼らず、自立することを模索するべき」などの提案もあります。
国は、一括交付金について沖縄振興の新法で法制化することになっており、こうした状況と、アンケートの結果もふまえて、私たちは、昨年12月に次の2点を県知事に要望・提言しました。①一括交付金の内容について、県民に広く情報を公開すること、②一括交付金の実施あたっては、県や市町村がお互いの思惑で予算確保をするのではなく、県民、市町村民に公平に実施されるよう、公開の場で策定すること。
この要望・提言後、県は市町村への配分等を決める協議会を発足させ、それぞれの配分もほぼ確定し、県の予算案がマスメディアを通じて県民に公開されるようになりました。
つきましては、一括交付金を、ぜひ次の事業にも活用できるよう陳情します。

 ■陳情項目

  1. 待機児童を解消するために、行政の責任で受け入れの保育園の増設をはかる事業。
  2. 離島の高校生が安心して学べる、そして親の負担を軽減するために、県立高校の学寮を行政の責任で増設する事業。

(4)米軍発注工事の受注機会の確保について

 ■陳情主旨

全国の米軍基地の75%を沖縄県民が負担しており、負担の軽減の一貫として国及び県が地元中小企業へ優先受注出来る機会を構築されるよう陳情します。

 ■陳情項目

  1. ボンド保証金は、地元企業を支援する制度の仕組みを構築すること。
  2. 発注金額を約8割以上確保すること。

(5)建設工事入札参加資格審査項目へのエコアクション21(EA21)の加点について

 ■陳情主旨・項目

関係団体はEA21認証取得事業者に対する沖縄県建設工事入札参加資格審査項目への採用を要請してきましたが、2011年度から5点の加点が行われています。但し、ISO(20点)と同一評価になっていません。EA21促進のため2013年度からは同一加点を図って下さい。

(6)地元IT企業育成支援について

 ■陳情主旨

近年の世界的な経済危機や東日本大震災により、多くの県内IT企業が県外企業との取引が減り、優秀なITエンジニ アの仕事が激減し、企業内失業を余儀なくされています。さらには優秀な技術者の県外への流出をも招いており、中小企業の事業継続に大きな影響を与えています。
つきましては、地元での雇用吸収ができるように、また県が「沖縄21世紀ビジョン」で掲げる「県内立地企業の高度化・活性化」をはかるためにも、以下のことを陳情します。

 ■陳情項目

  1. 県内のIT需要を掘り起こすため、県内中小企業のIT導入のための支援制度を拡充すること。このことはIT化の遅れている県内企業の生産性を向上し、競争力を高めるためにも必要です。
  2. 地元IT企業の研究開発および新商品開発にかかる助成制度を充実させること。(少数企業の高額助成金ではなく、小額の開発助成金を多くの企業に機会を与える)
  3. CIO(Chief Information Officer)最高情報責任者の設置などの情報産業振興行政の一元化をお願いします。(県、市、町、村等の行政から発生するITシステムの発注形態を細分化し、県内中小IT企業でも参入できるよう分離分割発注とし、大手ベンダーロックインを改めること。現状として、大手ベンダーとの直接契約が多く、地元企業の契約が非常に少ない。そのことにより、雇用創出の機会が失われている為。)

(7)地球温暖化対策について

 ■陳情主旨

沖縄県では昨年3月策定の「沖縄21世紀ビジョン」に基づき、本年4月に「新たな計画の基本的考え方(案)」-沖縄21世紀ビジョン基本計画(素案)-を取りまとめた。環境に関する基本施策は「自然環境の保全・活用・再生」「持続可能な循環型社会の構築」「低炭素島しょ社会の実現」の項目の中で各種施策が述べられています。しかしながら、足元の地球温暖化の数値は、一刻も猶予できない状況になっています。2010年10月に公表された「沖縄県における温室効果ガス排出量(2000~2007年度)」は、基準年(2000年)と比較すると2007年の排出量は約141万トン(11%)増加、また2010年目標値(1,166万トン)と比較すると225万トン(19%)増加しています。そのような中、私たち沖縄県中小企業家同友会は、持続可能な環境保全型社会と循環型社会の構築をめざし、①環境保全型企業づくり、②環境ビジネスと市場創造、③環境保全型・循環型地域づくり、を基本に環境問題に取り組んでいます。
つきましては、次のことを陳情します。

 ■陳情項目

  1. 県内の再生可能エネルギー導入・電力系統安定化対策については、一昨年度からの宮古島などのマイクログリッド実証事業を踏まえ、本年度からは沖縄本島を含む「スマートエネルギーアイランド基盤構築事業」がスタートします。本年度は再生可能エネルギー法の制定もあり、期待のかかる本事業については、県民に広く情報提供するシンポジウム開催など、事業の見える化の推進を要望します。また、昨年7月に策定された「沖縄県エネルギービジョン」は、ビジョン策定にとどまることなく、基本計画・実行計画などの策定により、ビジョンの具体化を要望します。
  2. 県は本年度、公共団体、事業者など対象の「エコドライブ教習会」実施しました。受講者は1,000人を超え、教習会前後における燃費比較は、大半のドライバーで15%以上の削減効果が見られると報告されています。教習会受講者はまだ県民のほんの一部ですが、効果的なCO2削減事業です。平成24年度以降も予算措置を工夫し、県民へのエコドライブ普及の強化を図ってください。