永久劣後ローン融資制度の創設を要望します

 今般の新型コロナウイルス感染症の影響で、経済活動が停滞し、地域の中小企業は今後の売上げが見通せなっています。このコロナ禍は長期化すると言われており、売上の見通しが立たない中、様々な緊急融資が出されても、借入が増えることで返済は重くのしかかってきます。そこで、通常の融資ではない中小企業の支援策として「永久劣後ローン」創設の早期実現を、政府に求めます。沖縄同友会では多くの雇用を維持し、地域経済の基盤を担う中小企業を存続させため、「永久劣後ローン」創設を求める署名活動を行います。

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緊急提言 中小企業に対する「永久劣後ローン融資制度」の創設を要望します。

 売上高急減などで自己資本の多くを毀損した中小企業に対しては、資金繰り支援と併せて資本増強策が必要であると考えます。中小企業に対して永久劣後ローンの活用を進める政策をぜひ立案・実施してください。当会としては以下のような制度を提案します。

1.永久劣後ローンとは、返済の優先順位が一般債権に劣後する借入金であり、議決権も返済期限もないものです。企業の業績が回復し、財務状況に余裕ができた段階で返済をすることができる制度です。具体的には、地域金融機関が返済期限を定めない「永久劣後ローン」を実行します。

2.日常より中小企業との取引きがある地域金融機関を窓口とし、実行することで、一部の中核企業などに限定するのではなく、より幅広い中小・小規模企業を対象とした制度とします。

3.今回歴史的な非常事態であることを踏まえ、金利は通常の資本性ローンよりも低利なものとし、支援先企業の経営安定化に伴って順次金利を引き上げることとします。

4.政府はこの債権の買い取りをする仕組み(買取機構等)を構築し、「疑似資本」を中小企業に注入します。

5.私ども中小企業家同友会としても、会員企業をはじめ地域の中小企業に対して日常的な金融機関との接点強化、永続的な企業づくり、雇用の確保などについて、引き続き取り組んでいくことを呼びかけていきます。



中小企業の新たな支援のカタチ~『永久劣後ローン』とは~

1.資本性劣後ローンとは
 永久劣後ローンは、資本性劣後ローンの一種です。資本性劣後ローンとは、借入れではあるものの、返済を他の債権より後回しにして、直ちに元本の返済を求められないことから、資本としての性質が認められるローンをいいます。
 『劣後ローン』とは、聞き慣れない言葉ですが、つまりは「返済を後回しにできるローン」という意味です。

2.永久劣後ローンとは
 永久劣後ローンとは、資本性劣後ローンの中でも、永久に返済を後回しにできるローンのことをいいます。会社解散の時に清算すればよいので、会社が存続する限り、返済を迫られることはありません。
 もっとも、ローンですので、利息は支払う必要があります。つまり、このローンは、利息のみ支払い続ければ、永久に元本の返済を迫られることのないローンなのです。

3.永久劣後ローンの有効性
 コロナ過のいま、私たち中小企業は、企業の存続を金融機関からの融資に大きく依存しています。このまま有利子負債が大きくなれば、その返済が企業の存続にとって、過大な負担となります。この点、資本性劣後ローン、わけても永久劣後ローンであれば、
①元本の返済を迫られず、利息のみの支払いで済むことから、キャッシュフローが改善されますし、②この借入は『資本』とみなされますので、計算上の純資産が増えた分、さらに金融機関からの借入れが可能となって、企業の存続が容易となります。

4.永久劣後ローンの利点
 永久劣後ローンは、銀行などの一般の金融機関が、常日頃の付き合いの中から相当と認める企業に融資します。一般の金融機関も、このローンによって、借入企業の倒産リスクが減少すれば、貸倒引当金を下げることができますので、利益が出せるようになります。
 また、その融資債権は、国や公的金融機関が買い取る仕組みですので、一般の金融機関は、貸付金の不良債権化のリスクを回避できます。
 借りたまま返さないというモラルハザードも、一般の金融機関と普段から付き合いのない企業、収益性が極めて低い企業は融資を受けられないということで、回避することができます。国は、借入れた企業が利息を支払うことで、融資元本の返済を受けられますし、この仕組みによる経済効果が見込めますので、財政出動額に対する効果が高いといえます。
 このように、永久劣後ローンは、借りる企業、金融機関、国、そしてなにより中小企業の存続により、国民の皆さんが恩恵を受けることができます。

5.永久劣後ローンの実現可能性
 そんなうまい話が実現できるはずはないと、思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、すでに一部実現することになっており、本年六月に成立した第二次補正予算で、中小企業向けに一部資本性劣後ローンが実現したのです。

6.今後の取り組みについて
 資本性劣後ローンは、現実に実現可能な枠組みなのです。ただ、『永久』ではないこと、特に二十年未満の機関では、返済期間が到来することで、効果が限定的になること、予算規模については、少なく見積もっても五兆円程度は必要とされているところを一兆三千億円と予算規模が小さいことなど、これから改善を求めていかなければならないところが多くあります。
 まずは資本性劣後ローン、永久劣後ローンについて学び、そしてその輪を広げ、我々中小企業にとってよりよい制度となるよう、著名を集め、国に要望していきましょう。