2018年10-12月景況調査の結果について(見解)

沖縄県中小企業家同友会は、会員企業から抽出した413社を対象に12月3日から12月28日の期間、「10-12月期景況」についてのアンケート調査を実施しました。その結果について見解を発表します。
(2019年1月23日発表)

■回答企業の概要

回答企業174社 回答率42.1%(413社中)
業種別 (  )は実数

製造業17.2%(30) 建設業13.2%(23)
流通・商業26.4%(46) サービス業37.4%(65)
情報産業5.7%(10) その他0.0%( 0)

規模別 従業員数 (  )は実数

<正規>(平均34名)
1~5名23.0%(40)
6~10名17.8%(31)
11~20名17.2%(30)
21~50名27.0%(47)
51~100名9.2%(16)
101名以上5.7%(10)
<臨時・パート・アルバイト>
平均18名

■2018年10-12月期景況調査の結果について

足下の景況感を示すDIは15期連続プラス超だが人件費増加、原材料費等の増加により2期連続後退。先行きはわずかながら改善の見通し。

①業況判断は後退するも15期連続プラス超。建設業と流通・商業以外の業種で後退するも、引き続き全業種でプラス超。
②売上高DIは後退するも、前期に続きプラス超。建設業と情報は大幅な悪化でマイナス超に転化。
③経常利益DIは大幅に後退するも、かろうじてプラス超を維持。製造業、流通・商業、情報はマイナス超に転化。
④資金繰りDIは後退するも、前期に続きプラス超。建設業以外の業種で後退し、情報は水面上、サービス業はマイナス超に転化。
⑤経営上の問題点は「従業員の不足」、力点は「新規受注(顧客)の確保」が第1位。
⑥先行きは建設業と流通・商業以外の業種で後退予測となるもわずかながら改善の見通し。

(本文中、特に断りのない限り前年同期比です)

1.業況判断

[現状]

  1. 前年同期(10-12月期)と比べて、全業種の「業況判断」は、「好転」(32.9%)、「不変」(47.6%)、「悪化」(19.4%)となっており、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は、13.5。前期(16.2)から2.7ポイント後退するも、前期に続きプラス超。2015年4-6月期から今期まで15期連続プラス超となる。業種別でみると、建設業と流通・商業以外の業種で後退するも、前期に続き全業種でプラス超。前期調査では10-12月期は、DIが24.6と改善の見通しとなっていたが、今期調査では13.5と前期見通しと比べると大幅な後退となっている。要因として下記の点があげられている。(自由記述より抜粋)
    イ)原紙価格の値上げ要請と人件費増(製造業、紙・紙加工品製造業)
    ロ)人材不足により、受注調整。仕事を断っている。(建設業、職別工事業)
    ハ)原油の高騰が大きく影響、人件費の増加(流通・商業、弁当販売)
    ニ)人材不足に伴うサービスの低下(流通・商業、事務用品販売)
    ホ)前半は台風、地震等の自然災害の影響、新規参入の増加により価格競争が激化、ネット販売の普及により個人旅行がトレンドとなり、旅行社が苦戦しており、レンタカーパック商品伸び悩み。レンタカーもネットで選ぶと価格優先となり苦しい状況が続いている。(サービス業、レンタカー業)
    ヘ)人材不足によりサービス量を増やせない。施設志向により、在宅利用者が減っている。(サービス業、介護福祉事業)

  2. 製造業の「業況判断」は、「好転」(30.0%)、「不変」(53.3%)、「悪化」(16.7%)となっており、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は13.3。前期調査の業況判断DI(36.0)から22.7ポイント大幅に後退するも、前期に続きプラス超。前期に比べて「好転」の減少と「悪化」の増加により、DIの大幅な後退となっている。

  3. 建設業の「業況判断」は、「好転」(30.4%)、「不変」(56.5%)、「悪化」(13.0%)となっており、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は17.4。前期調査の業況判断DI(15.8)から1.6ポイント改善し、前期に続きプラス超。前期に比べて「悪化」は増加となるも「好転」がそれを上回る増加となった結果、DIの改善となっている。

  4. 流通・商業の「業況判断」は、「好転」(37.0%)、「不変」(39.1%)、「悪化」(23.9%)となっており、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は13.1。前期調査の業況判断DI(6.5)から6.6ポイント改善し、前期に続きプラス超。前期に比べて「好転」が増加した結果、DIの改善となっている。

  5. サービス業の「業況判断」は、「好転」(31.7%)、「不変」(46.0%)、「悪化」(22.2%)となっており、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は9.5。前期調査の業況判断DI(11.1)から1.6ポイント後退するも、前期に続きプラス超。前期に比べて「好転」は増加しているが、「悪化」がそれを上回る増加となった結果、DIの後退となっている。

  6. 情報産業の「業況判断」は、「好転」(37.5%)、「不変」(62.5%)、「悪化」(0.0%)となっており、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は37.5。前期調査の業況判断DI(38.5)から1.0ポイント後退するも、前期に続きプラス超。前期に比べて「悪化」が大幅に減少するも、「好転」がそれを上回る減少となった結果、DIの後退となっている。
[先行き]

  1. 「業況判断」全業種の次期(1-3月)見通し(前年同期1-3月と比べて)は、「好転」(34.3%)、「不変」(49.4%)、「悪化」(16.3%)となっており、DIは18.0。今期の13.5から4.5ポイント改善し、プラス超幅を広げる見通し。

  2. 業種別にみると、次期見通しのDIは、製造業(13.3→0.0)、建設業(17.4→34.8)、サービス業(9.5→7.8)、流通・商業(13.1→32.7)、情報(37.5→33.3)。建設業と流通・商業以外の業種で後退となる見通し。

2.売上高

[現状]

  1. 前年同期(10-12月)と比べて、全業種の「売上高」は、「増加」(33.3%)、「横ばい」(42.7%)、「減少」(24.0%)となっており、売上高DI(「増加」-「減少」割合)は9.3。前期調査の全業種の売上高DI(12.6)から3.3ポイント後退するも、前期に続きプラス超。

  2. 業種別の売上高DIは、製造業(26.9→23.3)、建設業(5.2→△9.6)、サービス業(11.3→7.7)、流通・商業(12.7→19.6)、情報(0.0→△33.3)。流通・商業以外の業種で後退・悪化。特に建設業と情報は大幅な悪化でマイナス超に転化。
[先行き]

  1. 「売上高」全業種の次期(1-3月)見通し(前年同期1-3月と比べて)は、「増加」(33.1%)、「横ばい」(52.1%)、「減少」(14.7%)となっており、DIは18.4。今期の9.3から9.1ポイント改善し、プラス超幅を広げる見通し。

  2. 業種別にみると、サービス業(7.7→12.9)、流通・商業(19.6→37.2)、製造業(23.3→0.0)、建設業(△9.6→23.8)、情報(△33.3→11.1)。製造業が大幅な「悪化」により水面上となるも、それ以外の業種は改善の見通し。

3.経常利益

[現状]

  1. 前年同期(10-12月)と比べて、全業種の「経常利益」は、「好転」(32.7%)、「横ばい」(35.1%)、「悪化」(32.1%)となっており、経常利益DI(「好転」-「悪化」割合)は0.6。前期調査の全業種の経常利益DI(13.9)から、13.3ポイント大幅に後退するも、かろうじてプラス超を維持。前期に比べて、「好転」の減少と「悪化」の増加により、DIの大幅な後退となっている。

  2. 業種別の経常利益DIは、製造業(27.0→△6.6)、サービス業(3.3→9.7)、建設業(26.3→0.0)、流通・商業(10.6→△4.4)、情報(30.8→△11.1)。サービス業以外の業種は大幅に悪化し、製造業、流通・商業、情報はマイナス超に転化。
[採算の水準]
採算(経常利益)の水準をみると、10-12月期の全業種のDI〔(「黒字」+「やや黒字」)―(「少し赤字」+「赤字」)〕は、41.6。前期(33.3)より8.3ポイント改善し、前期からプラス超幅を広げる。業種別では、製造業(40.0→31.1)、建設業(57.9→69.6)、流通・商業(40.0→46.5)、サービス業(24.2→31.2)、情報(△12.5→50.0)となり、製造業以外の業種で改善。特に情報は大幅な改善で前期のマイナス超からプラス超に転化。
[先行き]

  1. 「経常利益」全業種の次期(1-3月)見通し(前年同期1-3月と比べて)は、「好転」(30.4%)、「横ばい」(48.7%)、「悪化」(20.9%)となっており、DIは9.5。今期の0.6から8.9ポイント改善し、プラス超幅を広げる見通し。

  2. 業種別にみると、製造業(△6.6→△3.7)、建設業(0.0→19.1)、流通・商業(△4.4→21.5)、サービス業(9.7→5.1)、情報(△11.1→0.0)となっている。サービス業以外の業種で改善の見通し。
[好転した理由](複数回答可)[悪化した理由](複数回答可)
前期同様に「売上総量・客数の増加」(72.4%)が第1位で、第2位に「売上単価・客単価の上昇」(37.9%)、第3位に「人件費の低下」(10.3%)と続いている。業種別で見てもほぼ同様の傾向となっている。前期同様に第1位は「売上総量・客数の減少」(64.8%)、第2位に「人件費の増加」(44.4%)。第3位に前期第4位の「原材料費・商品仕入額の増加」(33.3%)、第4位は前期第3位の「売上単価・客単価の低下」(27.8%)と続いている。業種別でみると、製造業で「原材料費・商品仕入額の増加」(77.8%)が第2位と、他の業種に比べて比率が高いのが特徴である。

4.資金繰り


  1. 現在の資金繰りの状況について、全業種の「資金繰り」は、「余裕あり+やや余裕あり」(37.6%)、「順調」(34.1%)、「やや窮屈+窮屈」(28.3%)となっており、資金繰りDI(「余裕あり+やや余裕あり」-「やや窮屈+窮屈」割合)は9.3。前期調査の資金繰りDI(15.4)から、6.1ポイント後退するも、前期に続きプラス超。

  2. 業種別の資金繰りDIは、サービス業(4.8→△3.1)、流通・商業(23.9→8.9)、建設業(25.0→52.2)、製造業(24.0→6.6)、情報(7.7→0.0)。建設業以外の業種で後退・悪化し、情報は水面上、サービス業はマイナス超に転化。

5.経営上の問題点・力点

[問題点]
「貴社の経営上の問題点(上位三つまで)」では、前期に続き、第1位は「従業員の不足」(53.1%)、第2位は「人件費の増加」(35.2%)、第3位は「同業者相互の価格競争の激化」(20.4%)、第4位は同率で「仕入単価の上昇」(17.9%)、「熟練技術者の確保難」(17.9)と続いている。業種別でみても、ほぼ同様の傾向となっている。
[力点]
「貴社の経営上の力点(上位三つまで)」では、前期に続き第1位に「新規受注(顧客)の確保」(42.0%)、第2位に「人材確保」(40.1%)。第3位は前期第4位の「社員教育」(39.5%)、第4位は前期第3位の「付加価値の増大」(38.9%)となっている。業種別でみると、建設業で「情報力強化」(40.9%)が「人材確保」(40.9%)と同率で第1位となり、他の業種に比べ、比率が高いのが特徴である。

6.全国(「中小企業家同友会全国協議会(略:中同協)」の「同友会景況(10-12月期)調査」)との比較(12月1日~15日調査、896社回答)

業況判断DIでは、全国が前期5→今期7で2ポイントの改善。沖縄は前期16.2→今期13.5と2.7ポイントの後退。傾向は異なるが双方ともプラス超。プラス超幅は沖縄が大きい。

7.県内の他の調査との比較

①日本銀行那覇支店(11月13日~12月13日調査、147社回答)
日本銀行那覇支店の全産業の業況判断DIは、前期34→今期33で1ポイントの後退。同友会の場合、前年同期比(10-12月)でみると、DIは前期16.2から今期13.5で2.7ポイントの後退。傾向は同様で双方ともプラス超。プラス超幅は同友会が小さい。

②沖縄振興開発金融公庫(11月下旬~1月上旬、資本金1千万以上かつ従業員20名以上、344社回答)
沖縄振興開発金融公庫の業況判断DIは、前期1.6→今期4.1と2.5ポイントの改善。同友会の場合、前年同期比(10-12月)でみると、DIは前期16.2から今期13.5で2.7ポイントの後退。傾向は逆だが双方ともプラス超。プラス超幅は同友会が大きい。