2016年度 沖縄県の産業振興・中小企業政策に対する中小企業家の要望と提言

■ はじめに

I.中小企業の振興について

  1. 中小企業振興基本条例・中小企業憲章について
  2. 沖縄21世紀ビジョン基本計画・一括交付金について
  3. 地方創生について
  4. 中小企業支援計画・県単融資について
  5. 金融・税制問題について

Ⅱ.働く環境づくり

  1. 人材確保・育成について
  2. 女性の管理職増加について
  3. 誰もが働きやすい職場環境をめざして(福祉)

Ⅲ.産業振興について

  1. 観光産業の振興について
  2. 建設業(主に建築関係)の振興について
  3. 情報産業の振興について
  4. 環境問題にについて

はじめに

 私たち沖縄県中小企業家同友会は、会員企業を対象に2月26日から3月31日の期間、1「女性の管理職増加」、2「人材確保・育成」、3「産業振興-観光・建設・情報・環境」、4「中小企業憲章・中小企業振興基本条例」5「沖縄21世紀ビジョン基本計画、沖縄振興一括交付金」、6「地方創生」、7「金融・税制」、8「中小企業支援計画、県単融資等諸施策」、9「誰もが働きやすい職場環境を目指して(生き方・働き方・暮らし方)(福祉)」の9項目について、アンケート調査を実施しました。
私たちは、このアンケート結果をふまえ、さらに各々の部会(観光・建設・情報・環境・女性)、専門委員会等で検討を重ねてきました。
つきましては、以下の通り「沖縄県の産業振興・中小企業政策に対する中小企業家の要望と提言」を行います。

(2016年6月24日)

Ⅰ.中小企業の振興について

 沖縄県は立地する99.9%が中小・小規模企業であり、中小企業の振興がイコール経済振興となります。中小企業が元気になり、県経済、地域経済が活性化し、県民の暮らしと豊かな生活に繋げていくためには、中小企業振興基本条例の実効性を高め、全市町村での条例制定をめざすこと。さらに、沖縄県が進める沖縄21世紀ビジョン、一括交付金、地方創生などについても、中小企業家をはじめ、県民一人ひとりが主体的に関わっていかなければなりません。これらを踏まえ、中小企業の振興について以下のとおり、要望・提言をまとめました。

1.中小企業振興基本条例・中小企業憲章について

(1)中小企業振興基本条例について

 これまでの、沖縄同友会からの要望・提言などが反映され「中小企業振興会議」や「地域部会」の運営が見直され、中小企業の声を反映する仕組みが機能し始めています。今後も多くの中小企業の声を拾い、発展的施策に反映させていく為に、引き続き条例の意義やメリットについて啓発を強化し、まだ条例が制定されていない市町村での早期制定が必要だと考えます。
今回会員に行ったアンケート調査では、「中小企業振興基本条例は必要か?」の質問に対し、「必要」(72.4%)、「不要」(1.5%)、「分からない」(26.1%)という結果が出ています。昨年度の「必要」(63.6%)、「不要」(2.7%)、「分からない」(33.7%)に比べ意識の向上が見られます。
 また、すでに制定されている市町村は6市1町となりましたが、「最も魅力に感じるメリット」については「地域の抱える問題や課題を把握し、行政と課題解決できる」(36.6%)で1位、「中小企業の声が具体的に施策に反映されやすい」(26.8%)で2位でした。
結果として中小企業側も「一方的に要望する」というよりも、共に課題解決に向かうイメージと「声を届けやすい市町村に寄り添う」イメージが出てきることをうかがえます。
こうしたことを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 「中小企業振興基本条例」をすべての市町村で制定できるよう意義やメリットの啓発を強化していくこと。振興会議加盟団体をはじめとする、多くの民間団体と連携し、広報活動に取り組むこと。
  2. 「中小企業振興基本条例」のリーフレットをリニューアルすること。そこに制定後の主要な成果(県単融資利用率の向上、施策の改善等)を明記すること。
  3. 「中小企業振興基本条例」をすでに制定している市町村については、実効性向上に向けた意見交換会を開催し、運用状況や先進事例についての情報を共有すること。
  4. 各地域部会の機能拡充のために、どのような運営・議論が行われているのかについての情報共有(議事録をホームページ上に公開する等)を行い、運営や議論の進め方の改善に活かすこと。

(2)中小企業憲章について

 2010年に閣議決定された「中小企業憲章」は政府として、はじめて中小企業の経済的・社会的役割などについての考え方を示し、政策の方針をまとめた画期的なものです。同友会では、この「中小企業憲章」を多くの中小企業に知らせるための普及・啓発活動に取り組んでいます。
これらを踏まえ、アンケート調査の結果から以下のことを要望・提言します。

  1. 「中小企業憲章」で謳われている項目の中で、特に関心の高い「人材育成・確保支援」について、県としても具体的施策づくりに取り組むこと。(6P~7Pの人材確保・育成参照)
  2. 中小企業家同友会が取り組んでいる「中小企業憲章・条例推進月間」の取り組みに県も積極的に協力すること。
  3. 以下の3点を政府・関係機関に働きかけること。
    ・中小企業憲章を閣議決定にとどめず、国民の総意とするため、国会決議をめざすこと。
    ・首相直属の「中小企業支援会議(仮称)」を設置し、省庁横断的機能を発揮して、中小企業を軸とした経済政策の戦略立案を進めること。
    ・中小企業担当大臣を設置すること。

2.沖縄21世紀ビジョン基本計画・一括交付金について

 会員へのアンケート調査において、沖縄21世紀ビジョン基本計画の全般的な要望・意見を聞いたところ、

  • 南北縦貫鉄道は経済合理性の面で見直しを図り、LRT(次世代型路面電車システム)の南・中・北部への導入を優先すべき。
  • 人口増加、県民所得増加等の課題について、実効性のある施策を出してほしい。
  • どの業界でも人材不足である。外国人労働者採用の促進に取り組んでほしい。
  • 中間成果をまとめ、県民への分かりやすい公表を実施してほしい。

など、沢山の意見がありました。

沖縄振興一括交付金活用のこれまでの結果、今後の計画について要望・意見を聞いたところ、

  • 観光産業を更に発展させるためには、外国人観光客への案内(サイン、パンフレット)の強化を図ってほしい。道路の美化・雑草対策などは必要不可欠である。
  • ハード面は今後の維持費も見据えつつ計画を立ててほしい。ソフト面では教育面のバリエーションを増やし、今後に残る資産をつくってほしい。
  • 保育園を増やすこと、保育士待遇の改善施策などにも取り組んでほしい。
  • 理工学専門大学の設置、デザイン系を希望する学生の海外留学の増員施策にも取り組んでほしい
  • 広域連携事業にもっと力を入れてほしい。
  • 補助金交付後の成果・評価の情報開示に努めてほしい。

など、沢山の意見がありました。
会員の海外展開についての意向を尋ねたところ、海外事業進出(海外に事業所設置、商品の輸出入)
を考えているが(36.2%)、海外事業展開は考えていないが(63.7%)となりました。
これらを踏まえ以下のことを要望・提言します。

  1. 沖縄21世紀ビジョン基本計画、沖縄振興一括交付金の施策が多岐の分野にわたることから、 「県民が何を必要としているのか」など、県民対象のワークショップを開催すること。
  2. 同友会会員などを対象に沖縄21世紀ビジョン基本計画、一括交付金活用の成果・評価の説明会開催(継続)を実施すること、また、市町村にも同様なことを働きかけること。
  3. 企業の海外展開については、国、県、関係機関の支援メニューを総合的に案内できるワンストップサービス窓口の設置を検討すること。

3.地方創生について

 国が掲げる「地方創生」の理念やその意味、内容についてアンケートを行ったところ、理念、その意味については「知っている」(24.6%)と「知っているがあまりわからない」(51.4%)を合せると(76.0%)に対し、「知らない」(22.5%)と「聞いたこともない」(1.4%)を合せると(23.9%)。

 内容については、「知っている」(19.1%)と「知っているがあまりわからない」(51.5%)を合せると(70.6%)に対し、「知らない」(27.2%)と「聞いたこともない」(2.2%)を合せると(29.4%)という結果となり、新聞やTV・ラジオ等でかなりの告知をしていますが、中小企業者はじめ、国民が十分に理解しているとはとは言い難い結果となっています。

 また、「地方創生」で掲げられている「まち・ひと・しごとの創生」のキーワードに、中小企業が輝き魅力ある地方のあり方を築くにはどのような施策が必要ですかとの質問には、数多くの意見が多種多様に出されました。大きく3つに分類すると、

  1. 地方創生について積極的な広報を行うこと。また、市町村にも同様に働きかけること。
  2. 地方創生の理念である「まち・ひと・しごとの創生」をキーワードに円卓会議やグループ討論を行う、(仮称)「沖縄県まちづくり協働大学」を創設すること。創設にあたっては那覇市の「なは市民協働大学」の取り組みを参考にすること。

4.中小企業支援計画・県単融資について

(1)県の中小企業支援計画について

 県は、毎年度の「中小企業支援計画」を決定し、ホームページ等で告知しています。これまで、多くの中小企業が支援計画や県単融資制度について知らない状況がありましたが振興会議において、施策の改善が図られ加盟団体による周知も同友会会員へのアンケートの結果では、中小企業支援計画について「知っている」は回答者全体の(34.3%)で昨年の(37.9%)から3.6ポイント減少し、認知度が若干下がっていることが分かりました。

 支援計画の5つの基本方針に関する関心度では、第1位「経営基盤の強化」(58.8%)、第2位「経営革新の促進」(39.7%)、第3位「資金調達の円滑化」(26.7%)、第4位「環境変化への適応の円滑化」(16.8%)と続いています。

 県の中小企業支援事業・施策についての意見としては、「もっとPRすべき」、「運用を代行する金融機関が積極的にユーザーに働きかける。金融機関と行政の十分な連携」、「書類の簡素化、融資までの期間の短縮」などの声もあります。
こうしたアンケート結果をふまえ、次年度以降の策定にあたり次のことを要望・提言します。

  1. 「中小企業支援計画」の内容について、沖縄県中小企業支援センター、よろず支援拠点、各種専門家派遣事業を効果的に活用し、周知徹底を図ること。
  2. 中小企業支援制度の利用者からヒヤリングを行い、利用要件の緩和、手続きの簡素化に努めること。

(2)県単融資について

 県経済は建設業や観光産業を中心に堅調な推移を示し、それに伴い資金需要も活性化し、県単融資制度の予算執行率は2012年度(26.2%)から2013年度(44.5%)と大幅に改善し、2014年度(41.7%)と好調に推移を続け、2015年度(73.7%)と大幅に利用率が改善しています。また、中小企業振興会議等での関係団体の提案を受け、具体的に制度改善が進められてきています。同友会では昨年度と同様に、県単融資等の諸施策の利用状況を調査した結果、昨年の(10.9%)から2.6ポイント減少し(8.3%)と依然として著しく低い利用率であることがわかりました。

さらに実効性のある制度となるよう、以下のことを要望・提言します。

  1. 沖縄県単融資制度の案内リーフレットに、利用者の声や他の金融機関の融資商品との違いを掲載するなど、引き続き利用したくなる紙面づくりの研究に努めること。
  2. 利用率の低い制度融資を統廃合し、新たな制度融資を創設すること。(例:中小企業振興会議加盟各団体より、今後成長が期待される企業を推薦し、審査チームが認定した企業については、無担保・無保証、特別金利で貸付を行う)

5.金融・税制問題について

(1)金融・税制問題及び中小企業に対する融資姿勢について

  最初に中小企業に対する融資姿勢は、「これまで以上に親切に対応してくれる」の回答が昨年の(26.5%)から今回の(24.4%)となり、「これまでと変わらない」(69.9%)を含めると(94.3%)となり、昨年の(88.4%)から、さらに上昇し、昨年以上に中小企業への良好な対応が続いています。

しかしながら、金融機関に対して、以下のような意見もありました。

  • もっと柔軟な対応をしてほしい
  • リスクマネーの供給(短期継続融資)をしてほしい
  • 経営指導も含めた企業支援も行ってほしい
  • 信用保証協会についての意見(保証料が高い、ガイドラインが知りたい、メリットなし)

 また、今回、昨年10月に沖縄に進出してきた鹿児島銀行の企業へのアプローチ状況についての調査を行いましたが、現状ではそれほど具体的なアプローチは行われていないという結果になりました。

これらを踏まえ、以下のことを金融機関に働きかけるよう要望・提言します。

  1. 金融機関が本来持っているはずの融資リスク管理能力(長期的な視点での企業の価値判断力)の再検証により、中小企業への融資範囲を拡大すること。
  2. 信用保証協会の在り方を検討し、信用格付のガイドラインを公開すること。
  3. 金融機関は自己査定能力の向上に努め、行員スキルを改善すること。
  4. 都銀を含む県外金融機関が進出してきた際も対応できるよう、県内企業と良好な関係を構築し、経営支援等のサービスを充実させること。
  5. 利用者の立場に立ち、自社の融資商品だけでなく、県の制度融資も積極的に薦めること。

(2)第三者連帯保証・経営者保証に関するガイドラインについて

 同友会では第三者連帯保証・経営者保証に関するガイドラインについて、昨年に引き続き調査を行いました。実際には、第三者連帯保証を「している」(21.0%)、「していない」(67.7%)となり、昨年の「している」(31.5%)、「していない」(55.4%)の回答よりは、第三者連帯保証は減少しているという結果になりました。また、第三者連帯保証・経営者ガイドラインの件で金融機関に問い合せたり、協議したりしたかの質問では、「具体的に動いてない」の回答が(82.9%)で昨年の(85.0%)から若干改善はしているものの、引き続き圧倒的に高い水準となりました。問合せの結果、保証を外せた会社が(6.3%)で昨年の(1.8%)から改善、外せなかった会社は(3.6%)で昨年の(3.6%)から変わらずという結果となりました。

また、具体的な意見としては、

  • 解り易いガイドラインを具体的に知りたい
  • 保証協会に保証料を払い、さらに第三者保証を取るのはおかしい

等の意見もありました。また、昨年、沖縄同友会で行った県内地銀3行、沖縄公庫、信用保証協会、コザ信金と行った金融懇談会では、各機関とも新規融資顧客へのガイドラインの説明は徹底されているものの、既存顧客への説明は十分に行うことができていない状況が分かりました。

 これらの事を踏まえ以下のことを要望・提言いたします

  1. 経営者保証に関するガイドラインを県及び金融機関より、広く広報すること。(特に既存融資顧客への周知を強めること)
  2. 金融機関の自己査定能力を強化し、無担保・無保証の融資商品の拡充に努めること。(県の利子補給事業等も活用しながら)

(3)税制問題について

 消費税増税についてのアンケートでは、「悪影響がある」(72.3%)が最も多く、それ以外では、「わからない」(21.2%)が続いています。もちろん、国の政策であることは周知の事実ですが、消費税を含む税制全般の意見では、

  • 外形標準課税については小企業には不利であり、導入は反対・景気が良くない。先送りが良い。
  • 中小企業では恩恵がない。
  • 実施にコストがかかるので反対。
  • 何がどのようにどうなるのかが不透明。知っている人は良いが知らない人が知らないままで進んでいるように思われる。
  • 税収をあげるのが目的なら、企業を儲からせて税金をしっかり納めさせる方が良いと思う。

これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。
県としても消費税・法人税の動向に注視し、特に外形標準課税については、中小企業に与える影響が大きいことから反対すること。

Ⅱ.働く環境づくり

 好調が持続する県経済において、喫緊の大きな課題となっているのが、「人材」の問題です。この間、中小企業家同友会では、地域の若者を地域で雇用するための「共同求人」、障害者雇用の促進をはじめとする、誰もが働きやすい社会づくりをめざす「健障者」、女性の社会進出・地位向上をめざす取り組みを進める「碧の会」など、人材の問題や働く環境づくりについて、積極的な活動を展開してまいりました。しかし、根本的な課題解決にあたっては、中小企業、行政を含む関係者の連携が不可欠です。これらを踏まえ、働く環境づくりについて、以下のとおり、要望・提言をまとめました。

1.人材確保・育成について

 人材確保・育成に関するアンケート調査によると、人手不足が「かなり強くなっている」(26.7%)、「どちらかといえば強くなっている」(32.2%)と合わせて(58.9%)で人手不足感が強まっています。また、人手不足の理由として、「地域での労働人口の減少」(29.3%)と量の不足が挙げられる一方、「求める人材の不足(専門技術者等)」(67.5%)と質を求める回答が多くなっています。

(1)人材確保への支援について

①企業ならびに各学校・大学等と連携した中小企業への理解教育支援

 地域における産業人材の確保にあたっては、小中高校から専門学校、短大、大学などと連携し、就職前からの中小企業への理解を進める必要があると考えられます。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言いたします。

学生が一つの企業で半年以上の就業体験をする「長期インターンシップ」・「有償インターンシップ」の研究・支援を行うこと

②未就業者の就業支援について

 就業の意思を持ちながら就職活動を行っていない人の存在は、社会的に大きな損失であり、人材を確保する意味からも就業支援する意義は大きいと思われます。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言いたします。

中小企業振興会議、もしくは別会議を設置し、当事者である中小企業をはじめ、県雇用政策課、沖縄県大学就職指導研究協議会、沖縄県専修学校各種学校協会、沖縄県教育委員会なども交え、以下の件について抜本的な対策を講じること。

  • 未就職卒業者の実態調査及び就業支援
  • 女性の就業支援
  • 「ひとり親世帯」の就業支援
  • 中高年の就業支援

③中小企業が求める人材確保への支援

(ア)中小企業の生産性向上に必要なプロフェッショナル人材のUIJターンの環境整備(例 税、社会保険・労働保険料などの負担軽減、UIJターン希望者への就業支援等)
(イ)地元就職者への奨学金減免制度の創設
(ウ)外国人労働者の受け入れ支援

(2)人材育成(経営者および幹部(中堅)社員の能力強化)への支援

「人材確保で重視するもの」についての回答では「賃金の引き上げ」(74.8%)が最も多くなっています。賃金を引き上げるためには、労働生産性を高める必要があり、そのためには、人材育成は急務であります。また、人材育成においての課題として「自社で育成をできる担当者不足」(79.2%)「自社のノウハウ不足」(63.2%)となっており、従業員の離職防止と定着率向上の点からも、人材育成ノウハウの蓄積と人材育成担当者の養成は重要な課題となっています。沖縄県としても、これらについては、多くの施策が出されていますが、小規模企業が利用するには、期間の長さや、手続きの複雑さなど、ハードルが高く利用しづらいという声もあります。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言いたします。

下記の施策について、小規模企業が利用しやすい施策を研究すること

  • 企業内で人材育成施策を作成・実施することができる人材育成担当者の養成と養成プログラムづくり
  • 経営者や幹部(中堅)社員への個別指導ができる組織体制づくり
  • 研修等を受講した企業に対する認証制度

2.女性の管理職増加について

  内閣府男女共同参画局総務課は調査報告書の中で、「我が国の企業のうち99%以上が中小企業・小規模事業者で、これらの企業は、地域における雇用を創出し、地域資源を活用し、地域に還元する事業・サービスを行うなど、地域に根付いた経済活動を行っています。地域経済を支える中小企業・小規模事業者では、従業者に占める女性の割合が高くなっており、管理職に占める女性の割合も高くなっています。」とあり、中小企業・小規模事業所における女性のさらなる活躍が期待されています。

 今年の3月、国連本部で開かれた女性の地位委員会(UN, Economic and Social Council, Commission on the Status of Women)のサイドイベントで当会全国協議会事務局長がスピーカーとして招へいされた際、1975年に発表された同友会の労使見解について触れ、「経営者が労働者を経営上のパートナーと考え、強靭な企業体質とするためには実際の仕事を遂行する労働者の生活を保障するとともに、高い志気のもとに、労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立する努力が重要。当会会員は常に労働環境の改善を優先して考えている。また、雇用者に占める女性の割合は小規模企業ほど高く、女性の管理職の割合、高齢者雇用や障がい者雇用も同様に小規模企業ほど高い」という実態を紹介しました。

 今年度の沖縄同友会の女性管理職の登用に関するアンケート調査で、増大もしくはその取り組みを継続していると回答したのは(27.1%)ですが、減っているや存在しない等の消極的な回答は全体の7割近くとなり、会内の女性管理職についての取り組みは、二極化している実態が分かりました。当会全体の女性職員数は、正規社員(31%)と全国とほぼ同じですが、臨時パートは(52%)と全国の7割よりは下回っています。

 女性管理職が増えにくい理由には、「現場仕事・女性の少ない職場だから」、「小規模で管理職自体が不要」、「職員の意識が低い」、「仕事と家庭の両立や家族の協力が難しい」、「勤続年数が少ない」等が挙がりましたが、「問題はない」という回答も複数ありました。また、どのような環境が必要かという問いには、第1位に「女性社員の意識改革」(62.6%)、第2位「男性社員の意識改革」(38.8%)、第3位「現場復帰支援の充実」(33.8%)4位「管理職の意識改革」(32.4%)となりました。

女性活躍の課題を解決するには、男女共同による両立支援の推進が不可欠です。沖縄同友会には、4月時点の会員数1,102社の内、女性は225名で全体の(20.4%)、さらに理事は39名の内、女性が12名で全体の(30.8%)となり、女性の活躍が会の活性化・発展につながっています。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 当会の女性経営者部会「碧の会」(以下「碧の会」)に対し、昨年、説明のあった「第4次沖縄県男女共同参画計画~DEIGOプラン~」の成果を紹介すること。そのうえで、第5次計画への委員として「碧の会」の部会員を委員として参画させること。
  2. 「碧の会」の主催する「輝く女性経営者のつどい」は、県内の働く女性のキャリアアップの啓蒙につながる有意義な内容であるため、沖縄県は後援や広報等積極的に協力すること。(つどい=キャリアと家庭のバランスを取りながら働く女性の体験報告とグループ討論を行う。女性が管理職へ就くことへの意識向上やきっかけにつなげる)
  3. 県内の企業管理職に対し、女性の活躍をサポートすることへの意識向上を目的とした具体的取り組みと、企業に向けた支援を行うこと。また、パンフレットによる広報やイベント等の啓蒙活動を拡充すること。

3.誰もが働きやすい職場環境をめざして(福祉)

(1)障がい者雇用の促進を

 障がい者と健常者が垣根なく共生できる社会の実現こそ真に豊かな社会といえます。昨年8月、県担当部局との懇談会において、1年間の障がい者企業規模別就職件数の結果が公表(沖縄労働局)され、企業規模別就職件数では、全体の54%が法定未満の中小企業(50人未満)が雇用している現状が明らかになりました。一昨年の(57.4%)から若干下がったものの、依然半数以上を占め、実際の雇用者数では80名程度増えている現状となっています。

今回同友会が実施したアンケートでは150社からの回答が寄せられ、法定未満の中小企業が多数を占める中、「雇用している」(25.0%)で「今後は雇用したい」(14.6%)となっており、積極的に障がい者雇用に取り組み、今後雇用を検討していることがわかります。その一方で、「今はまだわからない」が(48.6%)と、半数近くを占めるなど、多くの中小企業が障がい者雇用について、躊躇している現状も垣間見えます。

 また、就職困難者についても回答企業の内、(26.6%)が実際に雇用している状況があり、制度の周知充実や、情報を求めるアンケートの回答も寄せられています。

現在雇用している企業についてはその継続、今後検討している、もしくはわからないと回答している企業については、一歩踏み出せるような環境づくりが求められています。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 「沖縄県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」及び、今年4月から新たに施行された「障害者差別解消法」の認知度を高めるため、積極的な広報・周知活動を行うこと。
  2. 各種助成金制度について、「知っているが活用していない」「知らない」を合わせると、全体の(74.3%)と高い比率となっている為、周知を徹底するとともに、今年4月施行の「改正障害者雇用促進法」について中小企業への広報を図り、障害者雇用促進制度の活用しやすい環境をつくること。
  3. 県内の障がい者雇用について、その半数以上が50人未満の中小企業による雇用である実態を踏まえ、その継続に向けた支援体制を整えること。
  4. 就職困難者と中小企業をつなぐ仕組みや、その採用及び教育等の継続に関わる支援策を講じること。
  5. 沖縄同友会が毎年開催地を変えながら実施している、障がい者問題を考える「雇用・就労支援フォーラム」について、県の積極的な参加を継続しながら、各市町村への周知に対しても協力すること。⑥障がい者が自立して働くための施策を関係団体や企業も交えて検討すること。

(2)介護職員の労働環境と働く介護者への行政支援の充実を

今後高齢化が進む社会にあって、沖縄県でも今後10年間に7,000人以上の介護職が不足するという統計が出ていますが、その人材確保や定着は非常に困難な状況となっています。また、働きながら自身の高齢な家族を介護する介護者を支える仕組みづくりも求められており、以下のことを要望・提言します。

  1. 働きながら在宅介護をしている介護者への企業の取り組みに対して行政支援制度を拡充すること。
  2. 民間と行政が一体となって、介護職員の労働環境について問題解決の手がかりを探す為のネットワークを構築し、労働環境と処遇改善に取り組むこと。

(3)子供の貧困問題について

 沖縄県で実施した平成27年度「子どもの貧困実態調査」において、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%で、全国の1.8倍、子ども3人に1人が貧困状態で暮らしていることや日常的な食料品を買えなかった経験がある貧困世帯が多いことなど、子育て家庭の厳しい生活の現状が明らかになりました。 (沖縄子どもの未来県民会議(仮称)設立趣意書より引用)

 この問題を根本的に解決するためには、経済界の果たす役割も大きく、当会でも、「沖縄子どもの未来県民会議(仮称)」の一員として、課題を整理しながら、取り組み方を検討してまいります。今回の要望・提言の中でも、「女性の管理職増加について」、「人材確保・育成」などを具体的に進めていくことも、課題解決の一翼を担うことになると考えますので、ぜひ推進をお願いいたします。また。当会が、めざす企業像である「人を生かす経営」に取り組む企業を増やすことが、この問題の根本的な解決につながると考えますので、会員はもちろんのこと、地域の中小企業全体に広げていきたいと考えています。

これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

子供の貧困問題の根本的な解決をめざし、沖縄子どもの未来県民会議(仮称)の研究課題のひとつとして、中小企業家同友会が進める「人を生かす経営」の実践を盛り込むこと。

■注【人を生かす経営】=「労使見解」の精神を生かした経営指針(経営理念、方針、計画)を確立し、社員教育を行い、求人を進める)
■注【労使見解】=中小企業における労使関係の見解の略称。経営者の責任、対等な労使関係、賃金問題など、中小企業家同友会がめざす経営者像、企業像が記されている。

Ⅲ.産業振興について

 沖縄県中小企業家同友会には、沖縄県の基幹産業にも位置づけられる、「観光」、「情報」、「建設」、そして環境問題の解決や環境ビジネス等に取り組む「環境」関連部会の4業種部会があり、各々の業界の課題解決や発展に向けた取り組みはもちろんのこと、業界の垣根を越えたビジネス連携についても研究を進めています。 これらを踏まえ、以下のとおり、要望・提言をまとめました。

1.観光産業の振興について

(1)外国人観光客の受入れについて

①インバウンド増加による課題の研究について

近年沖縄県においても、外国人観光客の入域が爆発的に増加しています。大きな経済効果が期待される反面、課題が生まれることも考えられます。今回会員(観光関連企業以外の業種も含む)に対して、インバウンド増加によるメリットや課題について聞いてみたところ、メリットとして、観光関連企業では客数・単価上昇による売上の増加という声が最も多く、その影響が、食品卸業、建設業、人材業、不動産業等、様々な業界に波及していることが分かりました。

 また、課題としては、マナーの問題、宿泊施設の不足、国内客の減少、労働人材不足、外国人観光客が来なくなってしまった時のリバウンドが怖いなどの意見がありました。つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

外国人観光客が増えることによる課題を県担当部局や各関係団体等で共有し、打開策の研究に努めること。

②インバウンド対応を中心とした観光産業高度人材育成のための、外国人材の活用について

沖縄県を訪れている外国人観光客を今後も継続させるためには、各観光施設での満足いく接客・接遇など、満足いくおもてなしが求められます。そのためには、語学力はもちろんのこと、その国の文化・風習等を踏まえた、対応が重要になります。これらの能力を伸ばすためには、外国人を雇用し、身近に学べる環境をつくることや、実際に現地に出向き、体感することが効果的であると考えられます。今回、外国人の雇用を検討するにあたり、課題となることについてアンケート調査を行ったところ、第1位「コミュニケーション能力」(76.0%)、第2位「社員教育の方法」(42.7%)、第3位「宗教・習慣の違い」(41.9%)、第4位「どこに相談したらよいか分からない」(25.8%)という結果になりました。つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  • ア)インバウンド対応力向上のために、外国人の雇用を奨励し、就労ビザ取得緩和の方法を検討すること。(例:沖縄県を外国人材雇用特区とする)
  • イ)県内大学や専門学校、日本語学校と連携し、観光関連企業で外国人が就労(アルバイト等)しやすい環境整備に努めること。(在籍学生名簿の集約や就労先紹介)
  • ウ)沖縄県の雇用相談窓口で外国人雇用の専門家を配置するなど、体制を整備すること。
  • エ)海外の文化・風習・歴史などを学び、接客・接遇や商品開発に活かせるよう沖縄県と海外(アジア)の観光人材に特化した交流事業を構築すること。(万国津梁産業人材育成事業やアジアIT人材育成支援・交流促進事業のスキームを参考に)

(2)観光関連産業の待遇改善及び未来の観光人材育成に向けた取り組みについて

  沖縄県の2015年の入域観光客数は793万6000人で過去最高の数字となりましたが、県民所得の向上には必ずしも直結していないといった声も聞かれます。また、昨今の深刻な人手不足の影響により、十分なサービスが困難な状況にあります。

 今回、観光産業のイメージについてアンケート調査を行ったところ、第1位「観光客増でさらなる発展が見込める」、第2位「県の基幹産業として魅力がある」(48.0%)、第3位「変形労働(早番・遅番)でキツイ」(24.0%)、第4位「給料が安い」(12.0%)という結果になりました。今回の調査においては、プラスのイメージが上位を占めましたが、若者の間では、低賃金や変形労働による不規則な就業時間といったマイナスイメージはまだ根強く、業界全体で職場環境の改善に努め、若者が働きたいと思えるよう、イメージアップを図っていく必要があります。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言いたします。

  1. 県内観光関連企業で、より質の高いサービスが提供できるよう、国内の先進企業での現場研修を奨励し、費用の一部を助成すること。
  2. 観光立県沖縄の啓発及び、未来の観光人材育成に向け、観光教本及び副読本を小・中・高校において、効果的に活用すること。併せて「旅育」の啓発にも努めること。

(3)観光客受け入れのための交通渋滞緩和に向けた取り組みについて

 入域観光客数増加をめざす本県において、交通渋滞は深刻な問題となっています。昨年8月に実施した県担当部局との懇談会では、県において渋滞解消に向けて、当面は公共交通機関の利用促進やバイパス道路の整備等に取り組んでいくと回答がありました。今回、会員を対象に、「わったーバス党」が始まって4年が経過したことを受け、路線バス利用に対する意識・行動がどう変わったかを聞いてみたところ、「頻繁に利用するようになった」(4.1%)と「時々利用するようになった」(10.9%)を合せても、(15.0%)にとどまり、さらに「利用する必要性を感じず、ほとんど利用していない」が(44.9%)で最も高い比率となっており、当会においては、バス利用に対する意識は著しく低い現状にあることが明らかになりました。

 つきましては、これらを踏まえ以下のことを要望・提言します。

  1. 「わったーバス党」をより多くの県民に周知できるよう、各地でのイベントや業界団体のイベントに県担当者とイメージキャラクターが積極的に出向き、周知を行うこと。
  2. 「わったーバス党」4年間の成果をまとめ、広報すること。

2.建設産業(主に建築関連)の振興について

 建設業界においては、東日本大震災、東京オリンピック開催による影響、来年予定されている消費税増税による駆け込み需要等、急激な仕事の増加による技術者、職人不足による人件費増加、資材価格高騰など、業界を取り巻く環境は厳しい状況となっています。今回、建設産業の発展において必要なものは何かについてアンケート調査を行った結果、「技能労働者の育成」(82.8%)、「労働者の待遇改善」(69.4%)「教育システムの改善」(33.6%)また、建設産業の現状についてどのように思うかについては「技術者不足」(66.4%)が最も高いという結果となりました。

 つきましては、建設産業が、地域の基幹産業として社会資本の基盤整備等、経済を先導する中核を担い、地域の活性化をもたらす重要な立場にある事も考慮し、以下のことを要望・提言します。

(1)建設産業の人材不足について

現在県内の建設業界は構造的、慢性的な人材不足により、工事量の急激な増加に建設業界が対応できず、建設産業の衰退や公共工事における予算の未消化物件、入札不調の増加が懸念されています。つきましては、現在の人材不足を解消すべく以下のことを要望・提言します。

  1. 積極的に人材育成や待遇改善、福利厚生の充実に取り組む企業に対して、経営審査の加点をする等、一定の評価の対象とすること。
  2. 女性の社会進出を促すことができるよう、建設業に従事できる環境作りの支援を行うこと。
  3. 育児、介護、身体的事情等で在宅就業を余儀なくされている人材をうまく活用できるような取りくみの支援を行うこと。

(2)ものづくり産業(建設産業)を支える技術者・技能者・労働者の確保・育成について

県内の特に建設現場では、技術者・技能者は必要不可欠な存在ですが、現在、若年労働者の建設産業への新規就職者は減少し、将来の建設産業を支える人材の不足が懸念され、人材の育成・確保が強く求められています。つきましては、将来の人材不足解消を目指し以下のことを要望・提言します。

  1. より一層、小・中・高校生のインターンシップの時間を増やすこと。
  2. 人材育成支援事業を拡充し、建設産業への就職を希望する生徒だけを集めて、インターンシップを各建築団体に委託すること。

(3)工事費予算、発注に伴う対応について

予算化された工事の予算書の作成、それに伴う予定価格の設定時期は、予算書の作成から設計業務終了後、半年、1年以上経過する場合、発注時期の実勢にそぐわない価格になり、入札不調や辞退を余儀なくされる傾向にあります。
また、県外企業とのJV形式の発注において、代表構成員を県外企業が行うケースがあるので、出資比率の差や、技術・ノウハウを学ぶ事ができない現状があります。つきましては、適正な品質確保、事業執行を行い、県内企業育成の為に以下のことを要望・提言します。

  1. 工事発注にあたり、県側の企画段階での予定建設費について、過去物件(いつ頃の段階か不明)の単価を採用するのではなく、現状、または直近の建設資材及び労務費を反映した予算を設定し、また、品質確保の為に適正な予算の上積みを行うこと。
  2. 代表構成員を県内企業とすること。

(4)建設コンサルタント(営繕業務)一般競争入札等に伴う対応について

昨年度より、県発注の営繕業務は原則的に一般競争入札を行っておりますが、最低制限価格が70%台で過当競争を行っている現状があります。利益を捻出するのも精一杯の経営状態の中で、設計技術者の賃金を上げる事や福利厚生を満足させることも出来ず、それに伴い、新規就職者の建設産業離れが顕著に出ています。しかし、九州各県の中でも最低制限価格が80%台の県は数県有り、引き上げる事は対応可能だと思われます。

また、同じく県では昨年度より、設計と監理業務の分離発注を行っておりますが、本来、設計者と監理者は同一者である事が設計の意図を十分発揮できる要素だと認識しており、最終的に建物の品質にまで影響を及ばしかねない事が危惧されます。つきましては、新規就職者の確保と建物の品質確保の観点から以下のことを要望します。

  1. 最低制限価格を90%台に引き上げること。
  2. 従来通り、設計業務と監理業務は分けて発注せず、随意契約を行うこと。

3.情報産業の振興について

(1)「IT津梁まつり2017」及びIT人材育成における県及び教育サイドからの支援について

2012年度から開始した未来のIT人材創出促進事業(IT津梁まつり)は、その規模と内容を確実に拡大してきています。IT津梁まつりの2015年の来場数は3,380人、2016年の来場数は5,000人を超えました。県内のIT関連イベントとして最大規模を誇っています。

 IT津梁まつりは、「沖縄の子供たちのIT能力を伸ばす」ために草の根的に発展してきた「ITまつり」を継承したイベントです。商業的なイベントではなく、県内のIT企業、学校、個人が連携をとりあい、互いにITの技術を披露して、教えあう事に主眼が置かれています。

 今年の具体例として大里中学校の生徒が、小学生にプログラミングを教え、モデル車を制御する方法を体験してもらうといった出展も行われました。企業は、その製品の技術を大学生に教え、大学生は高校生にプログラミングを教え、高校生は中学生に技術の面白さを教え、中学生は小学生に堂々とITの説明をするという光景が会場で繰り広げられました。

全国的にも類を見ない、まさに世代を超えたつながりを大切にする「オール沖縄」の真骨頂ともいうべきイベントです。

 また、ITに関しては、子供たちは一生懸命ですが、大人が理解できないという現状もあることは否めません。このイベントは、大人への情報提供の場としても重要な意義を持つものと考えます。

県は「IT産業を基幹産業に」と掲げていますが、それをになうのは若い人や今の子供たちです。先日の当会情報関連部会の会議では各社とも人材不足が大きな問題になっていることが話し合われました。人材育成は「百年の計」と言われます。若年層への働きかけが、今もっとも必要とされています。具体的には次のような施策が必要だと考えています。

  1. 子育て世帯へのパソコンやブロードバンド環境の普及を促進すること(沖縄県は全国で最下位)。
  2. 小学生からプログラミング教育を行うこと。(2020年度から小学校でのプログラミング教育が必須化される見通しとなりましたが、他府県では、既に民間での有償のプログラミング教室が多く開所されています。県内でもいくつかの企業が子ども向けプログラミング教室を開いていますが、約2万円/月ほどの受講料となっており、県内の一般の家庭の子どもたちが学べる料金となっていません。)
  3. 教育委員会や義務教育課から各学校(高校、中学校、小学校)へのIT津梁まつり参加を呼び掛けること。参加は授業の一環として位置づけること。

(2)ITの利活用の促進とIT産業育成・支援について

 中小企業においても戦略的IT経営が求められており、県内中小企業のIT化の促進についての調査では、第1位に「集客(ホームページでのPR、SNSの活用、ネット販売等」(39.5%)、第2位に「データ分析(顧客分析・経営分析・商品分析・売上分析など)」(20.2%)、第3位に「業務効率化(会計システム、文書管理システムの導入)」(15.1%)という結果となり、県内中小企業のIT化を促進するためには何が必要だと思いますかのアンケート調査を行った結果、第1位に「IT化への助成制度の創設」(40.9%)、第2位に「IT人材育成」(39.4%)、第3位に「IT戦略の確立」(35.0%)、第4位に「Wi-Fiなど無料インターネット環境整備」(30.7%)という結果になりました。

 ITを活用した経営戦略や業務改善など、IT化の必要性は感じているが具体的な導入までは至っていないのが現状です。観光に次ぐ基幹産業として位置付けているIT産業の発展のためにも県内需要を喚起し、ますます増加していく観光客へのニーズに応えるためにも県内中小企業のIT化の推進は必要不可欠といえます。

 具体的な意見の中ではとりわけ「業務の効率化」と「人材育成」、「無料Wi-Fi環境の整備」があげられています。また、「eおきなわ」会員同士の意見交換の中で、「技術の進歩によりITを活用した障がい者の就労が可能になってきている。IT業界の人材不足を補うために、これまで埋もれていた障がい者の就労を様々な方面から行政が積極的に後押しすべきである」との意見も寄せられました。

 つきましては、これらを踏まえ、県が「21世紀ビジョン」で掲げる「県内立地企業の高度化・活性化」を図るためにも、以下のことを要望・提言します。

  1. ITの活用推進に関する具体的施策を検討するために、まず、県内中小企業のIT活用の実態を把握することを目的に、ITの活用度合に関する成熟度調査を行うこと。
  2. IT化の遅れている県内企業の生産性、競争力を高め、県内のIT需要を掘り起こすため、県内の中小企業・小規模事業者のIT導入に対する支援制度の拡充及び広報活動を強化すること。また、IT化の相談に対するワンストップ窓口を設置すること。
  3. より多くの県内中小企業が戦略的IT経営に取り組む機会を増やすため、国や県の専門家派遣制度の広報活動を強化し、予算の拡充を行うこと。
  4. IT産業と他産業の連携を推進するための事業を充実させ、より多くの情報関連企業が他産業との連携を図る機会を増やすこと。
  5. 技術取得に時間を要するIT企業が、積極的に高校生を新卒で採用出来るよう、企業に対する育成費用等の助成制度を創設すること。
  6. 県外企業及び海外企業との共同プロジェクトなど県内IT企業が県外及び海外展開を図るための施策の充実及び広報活動を強化すること。
  7. 県内IT関連企業が使いやすい助成制度を拡充すること。
  8. 障がい者へのIT研修制度や、企業に対する育成費用等の助成制度を拡充すること。

4.環境問題について

 環境問題は地球温暖化問題などで近年関心が高まっていますが、今を生きる我々、子や孫、何代も先の子孫が健康で幸せに暮らせるように、持続可能な社会の構築に取り組み続けなければなりません。そのため、環境問題は非常に重要なテーマです。沖縄県においては2012年5月に発表した「沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)」において、環境に関する基本施策として「自然環境の保全・再生・適正利用」「持続可能な循環型社会の構築」「低炭素島しょ社会の実現」を掲げています。素晴らしい内容であり、実現のために着実に施策が実施されることが望まれます。しかしながら、地球温暖化問題の数値は、「沖縄県地球温暖化対策実行計画進捗管理報告」によると、2013年度における県内の温室効果ガスの総排出量は、1,315万トンで、基準年度(2000年度)の総排出量1,244万トンと比べ、71万トン(5.7%)増加し、2020年度の目標である1,244万トンを実現するためには71万トン(5.4%)の削減が必要とされています。そのような中、私たち沖縄県中小企業家同友会は、持続可能な環境保全型社会と循環型社会の構築をめざし、①環境保全型企業づくり、②環境ビジネスと市場創造、③環境保全型・循環型地域づくりを基本に環境問題に取り組んでいます。つきましては、以下のことを要望・提言します。

(1)「第2次沖縄県環境基本計画」について

  1. 当会会員向けアンケート(2015年2月)で同計画の認知度を調べたところ、回答者のうち同計画を知っていると回答したのは(22.1%)で前年の(20.7%)から1.4ポイント上昇しています。同計画では事業者の参加・連携・協力が求められていますが、同計画を知らなければ参加のしようがありません。ついては、以下のことを要望・提言いたします。
    県と当会が協力して認知度を高められる方策を考えていくこと 
  2. 同計画では事業者の環境保全活動への取り組みを求めているので会員の取組状況を調べたところ、上位5位は次のようになりました。第1位「廃棄物の減量化」(46.9%) 第2位「エコドライブ」(24.2%)、第3位「再生可能エネルギーの活用」(21.9%) 第4位「環境マネージメントシステムの導入」(19.5%)第5位「従業員への環境教育」(16.4%)。これらを踏まえて以下のことを要望・提言いたします。
    同計画において県民の参加も求めているので、県民の一部でもある従業員への環境教育について支援(助成金、講師派遣など)に努めること。 

(2)地球温暖化防止対策、クリーンエネルギー推進、低炭素都市づくりの推進について

 2008年に始まった住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金、2009年11月から始まった「太陽光発電の余剰電力買取制度」、2012年7月から始まった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」などの相乗効果により、近年太陽光発電は急速に導入が進んでいますが、2015年度から一気に顕在化した系統連系問題により、太陽光・風力発電などの導入、推進が目標を見失った状況と思慮しています。系統連系問題については国の関係省庁、沖縄電力などとの連携により、技術的な改善策を追求し、また、国内のエネルギーを取り巻く環境は東日本大震災や系統連系問題などにより大きく変化していることから、以下のことを要望・提言いたします。

  • ア)沖縄県エネルギービジョン・アクションプラン(2013年度策定)の見直しを行うこと。
  • イ)安定電源としてのバイオマス発電の促進を図ること。

(3)資源リサイクル施策の具体化について

 環境省の資料によると、2013年度の一般廃棄物のリサイクル率は全国平均20.6%で、これに対して同年の沖縄県のリサイクル率は15.3%と全国に比べ資源リサイクルへの取り組みが著しく遅れています。沖縄県廃棄物処理計画(第4期)(2015~2020年度)では、第3期目標(2015年度)と同様に2020年度目標値を22%としていますが、具体的施策が乏しい状況です。ほとんどが焼却されています。これらを踏まえて以下のことを要望・提言いたします。

「その他プラスチック製容器包装」や廃食用油について、一括交付金などを活用した市町村での分別・収集の促進を図ること。

(4)エコアクション21(EA21)の普及強化について

①「沖縄県地球温暖化対策実行計画進捗管理報告」によると、「エコアクション21認証・登録事業者数」は2014年度で57件(12年度は75件)のこれまでの横ばい状況からかなり減少しています。つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言いたします。
ア)減少の要因把握を行い、適切な対応を図ること。
イ)県主催によるEA21普及セミナーの継続的開催などにより中小事業者への一層の普及啓発と、県内市町村へのEA21取得に向けた指導を図ること。

② 関係団体はEA21認証取得事業者に対する沖縄県建設工事入札参加資格審査項目への採用を要請してきましたが、2011年度から5点の加点が行われています。但し、ISO(13点)と同一評価になっていません。つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言いたします。
EA21促進のため2017年度からは同一加点を図ること。

(5)電力の自由化、エネルギーシフト(エネルギーの地産地消)について

会員の意見を聞いたところ、①電力の自由化は沖縄が離島県のため、難しいことが多いと思いますが、是非、競争できるように進めてほしい②エネルギーシフト(エネルギーの地産地消)を推進することで新しいビジネスが生まれる可能性があります③電力の自由化、エネルギーシフトの啓蒙活動を国、県レベルと行ってほしいなど、沢山の意見がありました。つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

同友会会員などを対象にした説明会(県内の状況・県の方針説明など)を開催すること。

以上。