2018年度 沖縄県の産業振興・中小企業政策に対する中小企業家の要望と提言

I.中小企業の振興について

  1. 中小企業政策について
  2. 沖縄21世紀ビジョン基本計画・一括交付金について
  3. 地方創生について
  4. 金融問題について

Ⅱ.働く環境づくり

  1. 人材確保・育成について
  2. 女性の活躍及び多様な働き方の推進について
  3. 誰もが働きやすい職場環境をめざして

Ⅲ.産業振興について

  1. 観光産業の振興について
  2. 建設産業(主に建築関連)の振興について
  3. 情報産業の振興について
  4. 環境問題について

Ⅰ.中小企業の振興について

 沖縄県は立地する99.9%が中小企業・小規模企業であり、中小企業の振興がイコール経済振興となります。中小企業が元気になり、県経済、地域経済が活性化し、県民の暮らしと豊かな生活に繋げていくためには、中小企業振興基本条例の実効性を高め、全市町村での条例制定をめざすこと。さらに、中小企業の自立・発展につながる支援施策を立案することが求められます。また、沖縄県が進める沖縄21世紀ビジョン、一括交付金、地方創生などについても、中小企業家をはじめ、県民一人ひとりが主体的に関わっていかなければなりません。

1.中小企業政策について

(1)中小企業振興基本条例について

 「沖縄県中小企業の振興に関する条例」制定後、沖縄同友会からの要望・提言などが県政策に反映され「中小企業振興会議」や「地域部会」の運営等も含め、中小企業の声を反映する仕組みとして機能し始めています。それに伴い、県内で条例の果たす重要な役割が理解され、制定する市町村は7市1町と増えています。 会員へのアンケート調査では、「中小企業振興基本条例は必要か?」の質問に対し、「必要」(64.6%)、「不要」(1.4%)、「わからない」(34.0%)という結果が出ています。昨年度の「必要」(72.4%)、「不要」(1.5%)、「わからない」(26.1%)に比べ意識の低下が見られます。今後も多くの中小企業・小規模企業の声を拾い、施策に反映させていく為に、沖縄県と経済団体が更なる強固な連携をし、引き続き条例の意義やメリットについて、啓発を強化することが必要です。そのためには、まだ条例が制定されていない市町村での早期制定を県と共に進めていくことが重要です。 これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 「中小企業振興基本条例」をすべての市町村で制定できるよう意義やメリットの啓発を強化していくこと。振興会議構成団体をはじめとする、多くの民間団体と連携し、広報活動に取り組むこと。
  2. 県内中小企業の実態・課題を把握するための調査活動を実施すること。(外部調査機関への委託、既存調査データの活用、振興会議構成団体との連携等も検討しながら)
    中小企業家同友会では中小企業振興のためには、「中小企業振興基本条例」、「振興会議」、「実態調査」の3つが定石であると言われています。正しい戦略を打つためには、正確な現状把握が必要となります。
  3. 県内各市町村での条例制定に向けて、既に条例を制定している7市1町に対し、現状の運用状況や課題についてアンケート調査を行い、県内各市町村との情報を共有すること。

(2)県の中小企業ついて

 2 今回、アンケートで会員に対し、県の中小企業支援計画について知っているか質問したところ、「知っている」が35.4%で、昨年の34.3%からわずかに改善したものの、依然として低い認知度となっていることが分かりました。中小企業支援計画5つの方針の内、どの方針に関心があるかの質問では、第1位「経営基盤の強化」(68.1%)、第2位「経営革新の促進」(45.4%)、第3位「資金調達の円滑化」(37.6%)、第4位「環境変化への適応の円滑化」(33.3%)、第5位「創業の促進」(21.3%)という結果になりました。また、県の中小企業支援施策を利用したことがあるかの質問では、「ある」(19.6%)、「ない」(80.4%)となり、多くの会員企業が施策を利用していない状況が分かりました。どのような中小企業支援施策なら利用してみたいか、利用率を高めるために県として取り組むべきと思われることについての質問では、利用してみたい施策として、「ものづくり支援事業」、「人材確保・育成に関する事業」、「労働問題に関する施策」、「小規模企業に特化した施策」、「地域商業活性化支援事業」などが挙げられました。利用率を高めるための意見では「沖縄県よろず支援拠点の活用」、「諸手続きのITによる簡素化」、「悉皆調査、行政担当者が現場を回り、行政と中小企業の垣根を取ること」などが挙げられました。 多くの中小企業・小規模企業経営者にとって、自社が活用できる支援策を見つけ出すのは困難と   いえます。こうした経営者にとって、沖縄県よろず支援拠点や沖縄県産業振興公社等のワンストップ相談窓口は非常に有益な存在といえますが、さらに認知度を高めていく必要があります。また、経済団体や金融機関も、こうしたワンストップ窓口の機能や意義について正しく把握しておく必要があります。去る4月1日に沖縄県中小企業家同友会と沖縄海邦銀行の共催において、沖縄県よろず支援拠点活用塾を開催したところ、当会会員や沖縄海邦銀行支店長等100名を超える参加者が集まり好評でした。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 沖縄県主催によるワンストップ相談窓口活用塾(経営相談会)を定期開催すること。  (沖縄県よろず支援拠点や県内経済団体、金融機関等とも協力しながら)
  2. 沖縄の産業まつり等のイベントにブース出展し、ブース内で経営相談会を行うなどして、中小企業支援施策の周知につなげること。
  3. 県広報誌や中小企業振興基本条例リーフレット等へワンストップ相談窓口情報を記載すること。
  4. 行政担当者が現場を回り、中小企業・小規模企業経営者の生の声を聞く機会を拡充すること。

(3)中小企業・小規模事業者のIT化について

全国一低い沖縄県の労働生産性。IT化の遅れによって多くの機会損失が発生し、リーディング産業たる宿泊・サービス業を中心とした観光産業は、各産業の中で最も生産性が低く、次のリーディング産業と期待されるIT産業も全国の約半分と低い数値のままです。 一方、昨今のAI、IoTをはじめとするITの先端技術によってイノベーションが次々に生まれ、今やITを抜きに経営を語れないほど、IT経営、IT戦略が必須となっています。 沖縄県の中小企業・小規模事業者のIT化の遅れは、高齢の経営者が多く、規模が小さいことにも起因しますが、概ね以下の3つの課題に分類されます。

1)経営者自身の課題-IT経営が必要なことへの経営者の認識不足
2)企業の課題-IT成熟度の低さ(IT化の遅れ、IT投資、ITリテラシーの低さ)
3)経営環境-人工知能、IoT、シェアリングエコノミーをはじめとしたビジネス環境の急激な変化への対応の遅れ

上記課題を解決するために以下の要望・提言を行います。

  1. 県内事業者の「IT成熟度」調査を実施すること。
    IT成熟度によってIT化の方策は異なります。成熟度1の企業がいきなり成熟度5のIT化を実施することはできません。正しく成熟度を把握することによって効果的なIT化を実施することができます。最初にやるべきことは成熟度の正しい把握です。企業任せにせず、県としての「IT成熟度」調査実施を要望します。  
  2. 経営者に対する「IT経営」への気づき研修の継続的、網羅的に実施すること。
    中小企業・小規模事業者が付加価値を高めるための「IT経営」に取り組むためには、IT経営に対する経営者の気づき、認識の向上が必要です。そのための継続的、網羅的な研修の実施を要望します。
  3. IT経営による付加価値(労働生産性)を高めるための県独自の補助制度を創設すること。
    本土に比べ規模の小さい県内事業者のIT化は従来型の「守りのIT化」が中心で、付加価値を高めるための「攻めのIT経営」は資金面等、多くの困難を伴います。ITを活用して県内事業者の労働生産性(付加価値)を引き上げるためのIT支援策、IT成熟度向上のための支援策等の県独自の補助制度の創設を要望します。
  4. 県内中小企業・小規模事業者へのIT支援のための本庁内専門部署を設置すること。
    県内事業者のIT支援は産業振興公社、よろず支援拠点など、各支援機関で行われておりますが、県本庁内に専門の部署がありません。情報産業振興課は情報産業の振興のための部部署であり、また中小企業支援課は、中小企業全般の支援のための部署でありITを専門とする部署ではありません。県内企業へのIT支援は県経済の高度化、自立化のために今ほど必要とされている時期はありません。県内中小企業・小規模事業者へのIT支援のための専門部署の設置を要望します。
  5. 支援機関担当者のITリテラシーの向上とIT経営に対する理解の促進を図ること。
    中小企業指導員などの指導機関の職員のITリテラシーやITトレンドに対する認識、IT経営に対する認識は必ずしも高いものではありません。企業の認識を変えるためには支援機関担当者のITに対する認識の向上が不可欠です。支援機関担当者へのIT経営研修、人工知能やIoTなどの先端のITトレンド研修の継続的、網羅的な実施を要望します。

【主旨説明・補足】
日本の労働生産性は先進国中最下位、OECD加盟35か国中22位(2016年)で一人当たり783万円(年)、時間当たり約4080円の労働生産性です。沖縄の平均はさらに低く時間当たり約3000円です。
業種別に見ると最も高い「電気・ガス・水道」が全国7400円、沖縄8200円、最も低い「宿泊・飲食サービス」が全国920円、沖縄790円。ちなみに「情報産業」は全国4700円、沖縄2800円)です。沖縄県のリーディング産業である観光関連産業の「宿泊・飲食サービス」は農林漁業(沖縄920円)よりも低く、人手不足、低賃金、長時間労働の実態を反映したものと考えられます。情報産業も全国の半分程度の水準でしかなく、「付加価値の高いビジネスモデル」の確立が大きな課題です。
こうした労働生産性の低さの原因は様々で、個々に分析と対策が必要です。 一方、人工知能、ロボット、IoT、フィンテック、シェアリングエコノミーなどを伴うドラスティックなビジネス環境の変化は、あっという間に沖縄を呑み込み、中小企業・小規模企業においても「IT経営」の確立を急務としています。そのことは例えば以下の事実によっても明らかです。
昨年以降、中国からの爆買いツアーが急速に減少していることが問題となっています。2015年の爆買いツアーによる売り上げは約1兆5000億円です。一方、2016年の中国からの越境ECの金額は約1兆円です。観光地では買い物をせず、帰国後にネットで商品を買っていることになります。越境ECが話題になったのはつい最近のことであり、急速にネットに移行しています。
こうした消費環境の変化に対し、沖縄の企業はほとんど対応できていないと言われています。11月11日は中国の「独身の日」とされ、昨年は、1日のネット通販で1兆円の売り上げがあったと報道されました。日本製品も多数出品され、相当な金額が売れたとされていますが、沖縄からの出品は皆無たったと言われており、みすみすチャンスを逃しています。

 (4)中小企業憲章について

 2010年に閣議決定された「中小企業憲章」は政府として、はじめて中小企業の経済的・社会的役割などについての考え方を示し、政策の方針をまとめた画期的なものです。同友会では、この「中小企業憲章」を多くの中小企業・小規模企業に知らせるため、中小企業憲章シンポジウムを毎年開催するなど、普及・啓発活動に取り組んでいます。今回会員に対し、中小企業憲章を知っているか聞いたところ、「知っている」(57.9%)、「知らない」(42.1%)となりました。昨年の同様の質問では「知っている」(62.8%)で、認知度が低下しています。 これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 6月に県として「中小企業の日」、「中小企業月間」を設け、中小企業憲章・中小企業振興基本条例を推進するメッセージを発信すること。
  2. 中小企業家同友会が取り組んでいる「中小企業憲章・条例推進月間」の取り組みに、県も引き続き積極的に協力すること。
  3. 以下の4点を政府・関係機関に働きかけること。
    ・中小企業憲章を閣議決定にとどめず、国民の総意とするため、国会決議をめざすこと。
    ・首相直属の「中小企業支援会議(仮称)」を設置し、省庁横断的機能を発揮して、中小企業を軸とした経済政策の戦略立案を進めること。
    ・中小企業担当大臣を設置すること。
    ・中小企業憲章の周知・広報のキャンペーンを展開するため、6月に「中小企業の日」を設け、国民の休日を制定する運動に協力することや「中小企業月間」を設けること。

2.沖縄21世紀ビジョン基本計画・一括交付金について

 会員へのアンケート調査を行ったところ、沖縄21世紀ビジョン基本計画見直し(後期5年計画)について、実施計画などに入れてほしい施策や、中小企業に関する具体的な施策については下記の要望・意見がありました。また、沖縄振興一括交付金は前年度に比べかなり減額される見通しとなっていることについて意見を求めたところ、下記の要望・意見がありました。

  • 中小・零細企業のIT経営化への支援策と行政内の専門部署の創設。いまやITなしに高度化も生産性の向上も図れない。IoT、AI、ロボット、3Dプリンタなどの先端技術の県内企業への普及・導入促進。時代から取り残されないためには、特にIoTについては、全島wifi化と併せてIoTのネットワーク基盤の整備への取り組みと公共インフラ化。いつでもどこでもIoT機器が自由かつ安全に使えるインフラの整備により、県民や県内中小企業の利便性の向上、ビジネス創出、製品のIoT化、サービスへのIoT導入による高度化を図る必要があります。
  • 一括交付金で執行した事業は公表し、その効果を検証していく必要があります。また、未執行の事業は積極的に公表すべきだし、執行状況を四半期ごと評価していくことも重要です。
  • 一括交付金事業は、行政の業務遂行能力が大きく影響を及ぼすが、交付金事業の執行状況を監視していくための、官、地域代表、民の仕組みづくりが必要と思います。

これらを踏まえ以下のことを要望・提言します。

  1. 沖縄21世紀ビジョン基本計画改定及び2017年度一括交付金事業(県事業、市町村事業)について、県はホームページの掲載のみならず、マスコミを活用するなど、広報の強化を図ること。
  2. 沖縄21世紀ビジョン基本計画は復帰45周年の5月15日に改定された。改定計画を推進するため、県は9月をめどに各施策の成果指標(目標値)を盛り込んだ「実施計画」を策定するとしている。実施計画策定にあたっては、広く県民および関係団体などの意見を聴く仕組みをつくること。

3.地方創生について

 地方創生にについて「まち・ひと・しごと創生総合戦略」をキーワードに、中小企業が輝き魅力ある地方のあり方を築くにはどのような施策が必要か。また、市町村の総務省への応募テーマについて質問したところ下記の意見、答弁がありました。

  • 地方創生に関して国は「まち・ひと・しごとの創生」を実行するのは、地域のビジョンを明確にし、役割を決め、それぞれの地域が行政指導ではなく、当事者意識を持たせ参画させる環境が必要だと思います。
  • 新規事業や新たな取り組みに対して、もっと積極的に支援して欲しい。補助金や助成金など、実績のある企業や事業に対してはハードルが低いが、実績の全くない事業への対応はかなり冷たい。一緒に取り組んで貰える環境をつくって欲しい。これは県も市町村も商工会も全て同じ。そして助成金事業なども同じ。金融機関も同様と感じます。

*市町村の総務省への応募テーマについて質問したところ、南風原町の人口ビジョンが紹介されたのみで、具体的な応募テーマの回答は得られなかった。

これらを踏まえ以下のことを要望・提言します。

  1. 県及び全市町村は2015年度に「人口ビジョン」に基づく「地方創生総合戦略」を策定した。同総合戦略事業の推進に当たっては、国からの補助率は50%と一括交付金事業の補助率80%に比べ低いため、せっかく策定した総合戦略事業が推進できてないと聞く。総合戦略事業は一括交付金事業補助金を活用するなどして、人口ビジョンに基づく重要施策の推進を図ること。
  2. 県及び市町村の人口ビジョンに基づく重要な総合戦略事業は、広く県民に周知する機会を増やすこと。また、マスコミ広報なども図り、人口減少社会に向けた県民の意識改革、沖縄県人口増加計画への市町村の参画、県民の参画の強化を図ること。
  3. 県は地方創生総合戦略事業について、地方創生推進会議を企画しているとしているが、具体化しているのか検証すること。また、会議委員の選任に当たっては、学識経験者、関係団体の委員のみならず、公募委員も選任すること。

4.金融問題について

沖縄同友会と株式会社沖縄海邦銀行は、平成 28年 10 月 18 日地域の中小企業等に対する経営支援や地域経済の活性化に積極的に貢献することを目的に包括連携協定書を締結しました。会員の関心も高く74.8%の方が知っていると答えています。他の金融機関ともこのような提携が進んでいくものと考えています。

(1)金融問題及び中小企業に対する融資姿勢について

  中小企業に対する融資姿勢は、「これまでと変わりない」が、昨年の(69.9%)から(61.2%)と大きく減少。「これまで以上に親切に対応してくれる」の回答が(24.4%)から(30.6%)となり、初めて30%を超えました。一方、「貸し渋りの態度が感じられる」が(2.4%)から(3.43%)とわずかですが増加しました。企業業績や経営姿勢などにより対応が異なる傾向が表れています。
 信用保証協会に対しては、「保証料が高い」(47.9%)が「適正である」(9.9%)を大きく上回っています。保証料率についても返済履歴に応じたて料率や評価項目の見直しを求める意見が多くありました。 金融庁では、事業性評価に基づく担保・保証に依存しない融資による成長資金の提供を地域金融機関に求めています。 これらを踏まえ、以下のことを金融機関に働きかけるよう要望・提言します。

  1. 金融機関が本来持っているはずの融資リスク管理能力(長期的な視点での企業の価値判断力)の再検証により、中小企業への融資範囲を拡大すること。
  2. 信用保証協会の在り方を検討し、信用格付のガイドラインを公開すること。
  3. 返済の良好な中小企業の返済履歴や経営指針書(経営理念、経営方針、経営計画)の添付を保証審査の評価項目とし、審査によって保証料率を低減すること。
  4. 金融機関は自己査定能力の向上に努め、行員スキルを改善すること。
  5. 都銀を含む県外金融機関が進出してきた際も対応できるよう、県内企業と良好な関係を構築し、経営支援等のサービスを充実させること。
  6. 利用者の立場に立ち、自社の融資商品だけでなく、県の制度融資も積極的に薦めること。

(2)経営者保証・第三者連帯保証に関するガイドラインについて

個人保証については、「つけている」が62.4%、「つけていない」が22.8%でした。第三者連帯保証を「している」が昨年の21.6%から18.5%、「していない」が67.7%から66.4%となり、着実に減少してきていると思われます。また、第三者連帯保証・経営者保証ガイドラインの件で金融機関に問い合せたり、協議したりしたかの質問では、「具体的に動いてない」の回答が78.5%で昨年の82.9%から着実に改善してきてはいるものの、引き続き圧倒的に高い水準となりました。問合せの結果、保証を外せた会社が6.3%から3.1%と悪化しており、外せなかった会社は3.6%から4.6%と、こちらも悪化しています。経営者保証に関するガイドラインの周知徹底を図る一方、ガイドラインの求める個人と事業の分離が難しい小規模企業や自営業の実態が表われていると思われます。 これらを踏まえ以下のことを要望・提言します。

経営者保証に関するガイドラインを県及び金融機関より、広く広報すること。特に既存融資顧客への周知を強めること。

Ⅱ.働く環境づくり

好調が持続する県経済において、喫緊の大きな課題となっているのが、「人材」の問題です。この間、中小企業家同友会では、地域の若者を地域で雇用するための「共同求人」、障害者雇用の促進をはじめ、誰もが働きやすい社会づくりをめざす「健障者委員会」、女性の社会進出・地位向上をめざす取り組みを進める「碧の会」など、人材の問題や働く環境づくりについて、積極的な活動を展開してきました。しかし、根本的な課題解決にあたっては、中小企業、行政を含む関係者の連携が不可欠です。

1.人材確保・育成について

(1)人材確保について

人材確保に関するアンケート調査によると、正規従業員の「不足」が(17.3%)、「やや不足」(37.3%)と合わせて(54.6%)で人手不足感が強まっています。臨時・パート等従業員についても、「不足」が(15.6%)、「やや不足」が(23.0%)、と合わせて(38.6%)となっています。また、人手不足の理由として、「地域での労働人口の減少」(26.6%)と量の不足が挙げられる一方、「求める人材の不足(専門技術者等)」(59.7%)と人材育成を求める回答が多くなっています。 この間、共同求人委員会では、大学、短大、高専、専門学校生、高校生等を対象にした合同企業説明会を30年に渡り開催してきましたが、特にここ数年は、説明会の来場者も減少傾向にあり、若年者に対し、中小企業・小規模企業で働くことの魅力啓発強化が必要です。 また、外国人材については、「高度人材として雇用したい」が(39.0%)、「単純労働者として雇用したい」が(19.2%)と需要が強くなっています。   これらを踏まえ、以下のとおり要望・提言します。

  1. 「沖縄県人材確保計画」(仮称)を策定すること「沖縄21世紀ビジョン」に基づき「沖縄県人口増加計画」がありますが、人材確保に焦点をあて、下記の2項目を中心とした計画の策定を要望します。ア)沖縄県の産業力強化に必要な人材の明確化と確保イ)沖縄県の外国人材に対する方針の明確化
  2. 沖縄県と同友会の共同求人委員会で定期的な情報交換を行うなどして、若年者に対し、中小企業で働くことの意義や魅力啓発強化の方策を研究すること。

(2)人材育成について

 人材育成に関するアンケート調査によると、その課題として「自社のノウハウ不足」が(40.6%)「自社で育成をできる担当者の不足」が72.9%と人材育成支援への必要性が高まっています。沖繩県でも人材育成に関する施策が行われていますが、小規模企業には利用しづらい等の声があります。また、国においては、実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関として「専門職業大学」を制度化する動きが出ています。これにより観光やIT、農業などで即戦力となる人材を育成することが可能となります。 これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 下記を中心に、小規模企業が利用しやすい施策を研究すること。 ア)企業内で人材育成施策を作成・実施することができる人材育成担当者の養成と養成プログラムづくりイ)研修等を受講した企業に対する認証制度
  2. 国が制度化を進めている「専門職業大学」設置を検討すること。

2.女性の活躍及び多様な働き方の推進について

  沖縄県でも生産年齢人口が減少しはじめている中、益々女性の活躍が期待されています。沖縄県の女性はよく働くと言われていますが、まだまだパートや非正規での割合が高く、活躍の場づくりや働くための条件整備を進めていくことが急務です。  平成24年~平成28年までの第4次沖縄県男女共同参画計画~DEIGOプラン~が終了し、先駆的な取り組みで着実な成果としてワーク・ライフ・バランス企業認証取得企業数は目標の50社を大きく上回り、平成27年度で61社となっていることが、第5次DEIGOプラン(平成29年~平成33年まで)で発表されました。さらに、平成33年までの指標目標90社となり、多様な就業を可能にする環境の整備、働く人の意識改革を進めていくビジョンが明確に示されました。
しかし、第5次DEIGOプランの中に示された女性管理職比率目標が、県15%、民間企業20%となっており、女性の視点、感性を企業活動や政策に生かし活力ある社会の構築に向けた具体的施策の成果は、まだまだ十分とは言えません。 今年度の会員企業へのアンケート調査でも、3年以上勤務している社員の給与で男性社員、女性社員の差はありますかの質問に対し17.2%の企業が「ある」と回答し、理由として、「仕事の習熟度、向上意欲の差がある」(75.0%)、「子育てや家庭の都合で休むことが多い」(25.0%)との回答が出ています。また、自社で研修を実施し意識改革を行っている企業は18.6%で、「これから取り組む計画がある」は28.3%、「難しい問題なのでまだ考えていない」は33.1%、「この問題について相談できる窓口がわからない」が4.1%となっています。  このような結果から、女性の活躍及び多様な働き方の推進、企業内のよりよい環境整備への支援に向けて、以下のことを要望・提言します。

  1. 沖縄県商工労働部に「女性の活躍、働き方改革推進室」の設置し、県内企業における女性管理職比率30%へ向けた中小企業に対する具体的な施策を示すこと。
  2. 各市町村に「女性が働く環境整備」のためのワンストップ相談窓口の設置すること。併せて、男性の育児休業取得率の向上、労働時間短縮の推進、就業意識改革セミナーを定期的に開催し、働く人を後押しする指導を行うこと。
  3. 女性活躍推進のための「企業評価制度」の導入を検討すること。(例)認定企業の無償広報等
  4. 県のホームページに「働く女性、働きたい女性」に役立つ情報を掲載した専門のWebサイトを開設すること。(埼玉県のWebサイト参照)
  5. 中小企業で働く人たちが本当に欲しい補助制度を一緒に考えること。(例)認可外保育園との格差を縮める方策、病児保育ができる指定病院の増設、臨時保育受け入れ企業への費用補助、介護認定にいたらない方を家族にもつ方へ病院送迎の代行等、会社を休まなくても済むような人材育成や補助金の増設、その他働く人の環境の整備に関わること。

3.誰もが働きやすい職場環境をめざして

(1)障がい者雇用の促進を

障がい者と健常者が垣根なく共生できる社会の実現こそ真に豊かな社会といえます。 今回同友会が実施したアンケートでは156社(昨年150社)からの回答が寄せられ、法定未満の中小企業が多数を占める中、「雇用している」(19.0%・昨年は25.0%で6%減)で「今後は雇用したい」(42.9%・昨年は14.6%で28.3%増)となっており、積極的に障がい者雇用に取り組み、今後雇用を検討していることがわかります。その一方で、「雇用できない」が(25.9%)と、多くの中小企業が障がい者雇用について、躊躇している現状も垣間見えます。 その躊躇している理由の設問として、「障がい者雇用を行う上で不安に思うこと(複数回答)」がありましたが、「障がいの特性がわからない」「育成方法が不安」の2つの選択が各50%以上もあり、企業の困り感や悩みに対応する相談機関の充実が求められています。 また、就職困難者についても回答企業の内25.5%が実際に雇用している状況があり、制度の周知充実や、情報を求めるアンケートの回答も寄せられています。 現在雇用している企業については、昨年の調査よりも6%下がっていることからも、その継続について、今後検討していると回答している企業については、一歩踏み出せるような環境づくりが求められています。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 「沖縄県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」及び、昨年4月から新たに施行された「障害者差別解消法」の認知度を高めるため、積極的な広報・周知活動を行うこと。
  2. 各種助成金制度について、「知っているが活用していない」・「知らない」を合わせると、全体の(79.4%・昨年は74.3%で5.1%増)と引続き高い比率となっている為、周知を徹底するとともに、その手続きの簡略化や申請から実施までの期間を短縮できるようにする等、具体的に障害者雇用促進制度が活用しやすい環境をつくること。
  3. 障害者雇用支援機関(雇用と福祉)の連携協議の場の中で、障がい者雇用相談窓口の充実、拡充についての方策を講じること。
  4. 県内の障がい者雇用について、その半数以上が50人未満の中小企業による雇用である実態を踏まえ、沖縄県としてその継続に向けた支援体制を整えること。
  5. 就職困難者と中小企業をつなぐ仕組みや、その採用及び教育等の継続に関わる支援策を講じること。
  6. 沖縄同友会が毎年開催し市町村を変えながら実施している、障がい者問題を考える「雇用・就労支援フォーラム」について、沖縄県としても労働部局と福祉部局で連携しながら積極的な参加を行い、各市町村への周知に対しても労働部局と福祉部局との連携について協力すること。⑦障がい者が自立して働くための施策を、関係団体や企業も交えて検討する場を各市町村の中でも実施できるようにすること。

(2)福祉事業者(介護、保育等)の実態調査について

今後、少子高齢化・人口減少が進む社会にあって、福祉業界(介護、保育等)の果たすべき役割はますます大きくなっています。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、介護の需要は益々増大してきます。しかし、介護業界においては、介護保険料の引き下げ等の影響で、適切なサービスを行うことができず、小規模事業者を中心に倒産件数も増え過去最大となっています。倒産まで至らずとも事業所の解散等も含め事業の継続が困難な状況も出てきています。
また、介護従事者の全国平均月額賃金は全業種の平均月額賃金と比較して10万円程度低くなっています。介護事業者の売上の95%以上は介護保険収入であり、事業所においても給与を上げたくても上げられない状況にあり、慢性的な人手不足が大きな問題となっています。
さらに、介護保険請求に対する事務作業や監査対応への負担増が経営上の課題となっており、介護事業の維持・発展のため改善が必要と思われます。 保育所に関しても、子供たちへの投資への重要性が指摘されていますが、その質・量が適切なのかを検証する必要があると思われます。 これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

①沖縄県内の介護事業者、保育事業者、従業員を対象に適切な実態調査を行うこと。
  (例)・現状の介護報酬で適切な介護サービスが提供できるか、施設運営や給与支払いが困難になっていないか。

  • 人材の確保、定着の状況についての課題・業務内容及び作業付加に対し、待遇や労働環境が適切であるか。業務に対する社会的地位が適切に確保されているか。
  • 現在の介護報酬についての課題、十分な報酬体系になっているのかどうか。
  • 事業所の請求や運営に係る事務手続きが必要以上に複雑になっていないか。
  • 現状の保育制度の課題について

Ⅲ.産業振興について

沖縄県中小企業家同友会には、沖縄県の基幹産業にも位置づけられる、「観光」、「建設」、「情報」、そして環境問題の解決や環境ビジネス等に取り組む「環境」関連部会の4業種部会があり、各々の業界の課題解決や発展に向けた取り組みはもちろんのこと、業界の垣根を越えたビジネス連携についても研究を進めています。

1.観光産業の振興について

(1)インバウンド対応を中心とした観光産業高度人材育成のための、外国人材の活用について

沖縄県を訪れる外国人観光客にリピーターになってもらうためには、各観光施設での接客・接遇など、満足いくおもてなしが求められます。そのためには、語学力はもちろんのこと、その国の文化・風習等を踏まえた高度な対応力が必要です。対応力向上のためには、継続的な研修はもちろんのこと、現場に外国人を配置し、生きた事例から学ぶことが最も効果的です。沖縄同友会の人材確保・育成のアンケートでも、「高度人材(専門知識・技能等を有する人材)として外国人を雇用したい」の回答は39.9%と高く、これまで以上に外国人を雇用しやすい環境づくりが求められます。 つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. インバウンド対応力向上のために、外国人の雇用を奨励し、就労ビザ取得緩和の方法を検討すること。(例:沖縄県を国際人材交流特区とする)
  2. 沖縄県の雇用相談窓口で外国人雇用の専門家を配置するなど、体制を整備すること。

(2)労働力としての外国人材の活用について

現在、沖縄県においては、各業界で人材不足が深刻な課題となっています。とりわけ、飲食業やコンビニエンスストア、宿泊業などでは、外国人材がいないと事業が成り立たないほど、深刻な状況です。外国人材の中でも、就労ビザを持たない留学生は、経済力が十分でないことも多く、学費や生活費が賄えず、ダブルワークなど、違法な就労の横行といった課題も表面化してきました。
こうした留学生が、適正に日本での留学を続けるためにも、就労時間の規制緩和が求められます。
沖縄同友会の人材確保・育成アンケートの結果では、「単純労働者として外国人材を雇用したい」の回答は19.2%となり、観光関係の業種でみると、回答数は少ないものの、高い比率となっています。また、沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合が実施した同様のアンケート(回答期間2017年5月18日~25日、対象企業250社中50社回答)では、42.0%となり、労働力としても外国人の需要が強くなっています。具体的な意見でも、「沖縄の人を採用しようとしても応募がない。外国人は熱心でよく働く印象がある」、「TV、新聞、その他の媒体等で、沖縄の観光産業に携わっている外国人の方のコーナーや特集を組んでPRし、どの企業でも今は外国人労働者の雇用は普通なのだという風潮をつくっていくと、外国人の方の雇用アップ、企業の人材確保、既存従業員の英語習得のきっかけにもなり、良いと思う」等が挙げられました。
今後、沖縄県においても、労働人口の減少は確実な状況となっており、単純労働を含めた外国人材の活用は今後の沖縄観光発展のカギとなります。
 つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

 国と連携して、留学生の就労時間週28時間を35時間程度まで緩和する方策を検討すること。 (例:沖縄県を国際人材交流特区とする)

(3)民泊(商業型民泊)問題について

国は宿泊施設不足解消に向けて、住宅を活用した宿泊サービスとして民泊を推進しています。沖縄県においても民泊に対する関心が高まっている一方、ゴミ、治安・セキュリティ、騒音、無許可業者などの問題も指摘されています。沖縄同友会としては、こうした状況を受けて民泊ビジネスに関するアンケートを行ったところ、国が民泊を進めることについては「賛成」(67.2%)、「反対」(32.7%)となり、民泊によるごみ、治安・セキュリティ、騒音問題などについては「大いに不安」(42.0%)、「少し不安」(46.7%)、「不安だが仕方ないこと」(10.0%)、「不安とは思わない」(1.3%)となりました。民泊ビジネスへの参入については、「すでに参入している」(5.4%)、「参入してみたい」(11.4%)、「関心はある」(24.8%)、「参入しない」(58.4%)となり、民泊の推進に関しては、概ね賛成で関心は高いものの、不安要素も大きいという結果になりました。自由意見では、肯定的な意見として「空き物件対策としては良い取り組みだと思う」等、否定的な意見としては「既存宿泊施設への影響が気になる」、「無許可業者が多くてイメージが悪い」、「安全や設備の面で不安」といった意見、要望としては、「規制制度は絶対必要であり、検定・認定などのルールづくりが急がれると思う」、「宿泊者に対しての安全面、管理面、規制・防災を充実させたうえで運営すべき」等といった意見がありました。民泊が沖縄観光のイメージダウンにならないよう、早急な対策が必要です。国はこうした状況を受け、2016年6月2日に民泊の提供日数を年間180日以下とすることを閣議決定しています。安全が確保されていない施設を増やすことによって、既存の良質な施設が淘汰され、サービスの質の低下や県民の雇用の場が奪われることがあってはなりません。
 つきましては、これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. 年間提供日数の遵守の確認については、住宅提供者、管理者、仲介事業者からそれぞれ報告させるとともに、虚偽を防止又は摘発できる総合的な仕組みを整備すること。
  2. 無届出の違法な「民泊」の仲介サイトへの掲載禁止など規制の整備を行うこと。
  3. 生活環境を悪化させる場合は、地方の条例により、180日の範囲内において年間提供日数を制限できるようにすること。

2.建設産業(主に建築関連)の振興について

 建設業界においては、東日本大震災、東京オリンピック開催による影響により、急激な工事量の増加による技能労働者及び技術者不足による人件費増加、資材価格高騰など、業界を取り巻く環境は厳しい状況であり、また、若手入職者の減少による建設業就業者の高齢化が進行していることから、持続的な生産体制の確立の為の女性を含めた若手の入職促進、及び人材育成が喫緊の課題となっています。
今回、女性及び若手の入職促進へ向けた働き方改善についてのアンケート調査を行った結果、「賃金水準向上や社会保険加入等の処遇改善」(59.0%)、「長時間労働の是正」(47.5%)、「週休2日制工事」(44.3%)となり、それらに関連して感じている問題点として、「発注単価について、労務費・外注費等の高騰により実勢単価と合わない」(62.5%)、「工期設定について、職人不足により発注工期に対応できない」(41.1%)、「工事契約について、受注した後に発注者都合により着工できない」(32.1%)となっており、建設業就業者の処遇改善に向けた適切な単価設定が必要であるとの回答割合が最も高いという結果になりました。また、次に高い回答であった長時間労働の是正に向けた適切な工期設定に付随する問題として、工事の平準化についてのアンケートを行った結果、①発注時期の偏りの有無について「少しある」「かなりある」(82.3%)、②工期の年度末集中について「少しある」「かなりある」(87.1%)という結果になり、年間を通じた工事量の安定が課題となっていることを確認しました。
つきましては、建設産業が地域の基幹産業として社会資本の基盤整備や防災、経済を先導する中核を担い、地域の活性化をもたらす需要な立場にあることを考慮し、以下のことを要望・提言します。

(1)工事費予算、発注から契約に伴う対応について

 予算化された工事の予算書の作成、それに伴う予定価格の設定時期は、予算書の作成から設計業務終了後、半年~1年以上経過する場合、労務費や外注費の高騰により発注時期の実勢にそぐわない価格になり、入札不調や辞退を余儀なくされる傾向にあります。また、工事受注後、発注者都合により着手できないことや、設計業務者と監理業務者が異なることによる確認作業の煩雑さが発生していることから、以下のことを要望・提言します。

  1. 工事発注にあたり、県側の企画段階での予定建設費について、過去物件の単価を採用するのではなく、実勢単価に合わせた建設資材及び労務費を反映した予算を設定すること。
  2. 発注前の事前調整(前工程の工期設定、用地買収等)を適切に行うこと。
  3. 従来通り、設計業務と監理業務は分離発注せず、随意契約とすること。

(2)適切な工期設定及び工事の平準化について

急激な工事量の増加による技能労働者及び技術者不足から、発注工期への対応のための長時間労働が増加しております。また、発注時期の偏り、工期の年度末集中の状況から、年間を通じて仕事量が安定せず、雇用の安定及び賃金水準の向上といった労働環境の改善が難しい現状があります。 つきまして、工事の平準化のため、以下のことを要望・提言します。

  1. 工事の施工時期の平準化を目的として活用されている債務負担行為について、活用状況及び平準化の改善状況を公表すること
  2. 計画的な発注による工事の平準化や受注者にとって効率的で円滑な施工時期の選択を可能とするため、発注者が指定する一定期間内で受注者が工事開始日を選択できる任意着手方式(余裕期間制度)について、活用状況を公表すること。
  3. 工事または業務を実施する中で、計画または設計に関する諸条件、気象、用地関係、資材等の入手難、その他のやむを得ない事由により、基本計画の策定等において当初想定していた内容を見直す必要が生じ、その結果、年度内で支出が終わらない場合には、速やかに繰り越し手続きを行うこと。
  4. 発注前年度のうちに設計・積算までを完了させることにより、発注年度当初に速やかに発注手続きを開始すること。

(3)担い手確保に向けた、技能労働者及び技術者の入職促進について

 若手技術者及び女性技術者の入職促進についてのアンケートを行った結果、「処遇改善」や「長時間労働の是正」の項目と並んで、「子育て支援制度」が必要であるとの回答が多くありました。 このことから、建設現場労働者の「処遇改善」につながる法定福利費の確保と、女性技術者の子育て支援に向けて、以下のことを要望・提言します。

  1. 社会保険の未加入対策への取り組みを支援すること
  2. 女性技術者の活用について、産休・育休期間も含めた実務経歴の算定や、産休・育休後の職場復帰制度を支援すること

3.情報産業の振興について

(1)情報産業が推進する産業全般の振興について

沖縄県のIT産業の成長は目覚ましく、観光に次ぐリーディング産業として期待されています。一方、労働集約型産業ともなっており、労働生産性は全国のIT産業の半分程度と低いままで、付加価値の高いビジネスモデルの構築が求められています。「IT戦略センター準備室」の役割は大きく、今後に期待するところです。一方、AI、ビッグデータ、IoTが急速に立ち上げる中、「データ」の重要性が叫ばれおり、内閣府も総理大臣の指示としてデータ・プラットフォームの整備を呼びかけています。こうした観点から以下ことを要望・提言します。

  1. 地理、農業、観光、マーケティング、その他のデータ・プラットフォームを構築すること。
  2. データ・プラットフォームを活用したAI、IoT、ドローン、3Dプリンタ、フィンテック、自動運転、ロボティクスなどの先端IT(IoT)技術を活用したアプリケーション、デジタルものづくり等への県独自の支援策を策定すること。
  3. データ・プラットフォーム(以下DP)を活用した県内産業へ応用すること。(例)観光✕IT✕DP、建築✕IT✕DP、環境✕IT✕DP、農業✕IT✕DPのシステム構築
  4. 中小企業家同友会等、県内企業との交流連携を図ること。データプラットフォームの構築のためには県内企業からのデータ提供などの連携が必要です。様々な業種がまんべんなく参加する中小企業家同友会をテストベットとして活用し、足がかりとすることができます。そのために、県担当者と当会情報関連部会役員との定期的な意見交換の場の設置など、緊密な相互交流、連携を提案します。

【主旨説明・補足】
沖縄県は本年度、「IT戦略センター構想」の実現に向け準備室を立ち上げました。その目的は昨今のAI、クラウド、IoT、3Dプリンタ、フィンテックなどの急速な発展がIT産業だけではなく、あらゆる産業に急激な変化、淘汰と再編をもたらす重要なファクターとして作用することを背景に、県内産業全体の高度化、IT化による付加価値の向上と国際競争力の向上を目指すものとなっており、大いに期待するところです。これまで沖縄県の情報産業振興策により2014年には、県内のIT関連企業数は300社超、雇用者数も24,000人と過去最高を記録しました。しかしながら業種別の内訳はソフトウェア開発が91社、コールセンターが80社、情報サービス産業が66社、コンテンツ制作業が36社となっており、その多くが雇用創出を目的とした下請け・受託開発やコンテンツ制作、オペレーターなどの労働集約型の産業となっています。 「中小企業・小規模事業者のIT化と情報産業の振興」でも触れましたが、そのことは情報産業の労働産性が全国4700円/時間、沖縄2800円/時間と、全国の半分しかないことにも反映しており、情報産業においても付加価値の高いビジネスモデルの構築が求められています。また県内の中小企業・小規模事業者のIT経営の促進は、県内情報産業の成長発展と不可分です。その課題の解決は容易ではありませんが、国の施策の中にいくつかのヒントが示されています。
例えば、日本経済再生本部の第6回未来投資会議(2017年3月24日)において、総理大臣よりデータプラットフォームの整備の指示が出されています。直接的には日本の農業エコシステム全体の地形、土壌、生育・生産、加工、販売、消費に関するあらゆるデータ収集、クラウドへの蓄積、共有などのデータプラットフォーム(データ アズ ア サービス等)の構築です。IoT農業によって蓄積されるデータもベンダーによってフォーマットは様々で互換性がなく、また学術資料もデータ化されていない、相互利用できないなど、これまでのアナログ、クローズを前提とした蓄積では、折角のIT化も高付加価値を生み出すことは困難です。 特にAI(機械学習、ディープラーニング)による分析では大量のビッグデータを前提としており、データの量、質によりアウトプットの精度が大きく異なってきます。これからのAI時代は、データを握るものが覇者となると言われるほど、データの重要性は高まっています。統一されたフォーマットによるデータプラットフォームの必要性が叫ばれています。 例えばこうした国の動きを先取りし、沖縄県において、地形(地図)、農業のデータ整備をはじめとして、観光、マーケティングのデータ・プラットフォームの構築など、IT戦略センターなど県が主導して構築する意義は十分にあるものと思われます。
有償、無償によって蓄積されたデータは、優先的に県内IT企業に有償、無償で提供され、アプリケーションや分析等に利用され、データ提供元に格安で還元される、あるいは、外部に有償で提供されるなど、独自にマネタイズされ、データ・プラットフォームを核とした新たなビジネスモデルの構築を生み出す基盤を提供し、県産の新たな付加価値を生み出します。地球儀を緯度で表せば、沖縄の気候風土と類似のアジア、中東、アフリカ、南米など、ワールド.ワイドの視点で新たなシーズを生み出すことも可能です。上記は、あくまでも例えばの話ですが、新たな視点として考慮いただければ幸いです。 沖縄県中小企業家同友会は、全国各地とは異なるユニークな四部会交流会という異業種交流を主体とする組織の中に業種ごとの4つの部会を組織しています。観光、IT、建築、環境の4つの部会が相互に連携・交流しており、今年度中にビジネス部会(仮称)として統合を予定しています(各部会は委員会として継続)。新たに農業委員会の結成も予定しています。
同友会会員企業をテストベットとして事前に実験、検証を行うことも可能です。同友会内部においても観光✕IT、建築✕IT、環境✕IT、農業✕ITの実践を通じて業種、会員企業の高度化。付加価値の向上を目的に活動することができ、他の経済団体。地域の事例として貢献することができます

(2)プログラミング教育について

今回、情報産業の振興に向けて、IT人材を育成していくために必要なことについて質問したところ、第1位「小学校からの学校教育にITを取り入れる」(66.7%)、第2位「県内IT企業と学生のマッチングの機会をつくる」(45.8%)、第3位「ITの先端技術を伝える場をつくる」(43.1%)、第4位「IT活用の事例をまとめる」(29.9%)、第5位「IT活用のコンサルタントを増やす」(25.7%)という結果になりました。 例年実施しているIT津梁まつりは、一昨年度、昨年度とも5000名の集客をほこり増々盛況であり、学生や教育関係者のみならず一般企業のITに対する認識の向上に大きく貢献しています。特に学生のプレゼン合戦や展示、プログラミング・ワークショップなど、学生のITリテラシーやプログラミング技術の向上にも一役買っていると自負しています。しかし一過性のイベントだけでは興味を引くことはあっても、継続的なプログラミング教育、STEM教育などが課題として残ります。群馬県では群馬プログラミング・アワードなどの取り組みにより、継続的な学生のプログラミング技術育成を支援しています。県内においても民間による学生向けのプログラミング教室が開催されており、南風原、嘉手納、宮古の3つのCoderDojo(※)、テックキッズ、デジラボおきなわ等が精力的に活動しています。これからのグローバル人材に必要なスキルの一つがプログラミング能力です。県の積極的な取り組みも課題の一つと考えます。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

  1. プログラミング・アワードを実施すること。
  2. 無償ボランティアで運営されている県内のcoderDojoへの支援を行うこと。県内数か所にあるCoderDojoを県内市町村全域に拡大するための支援を行うこと。(参考:東京都小平市教育委員会が支援する「コーダー道場こだいら」)
  3. 県教育委員会が主導し市町村教育委員会を巻き込んだ教員のプログラミングスキル向上に努めること。(まずは指導者の育成から。小中高校の教師のプログラミング能力の獲得が必須です。)

(※補足)CoderDojoとは?
CoderDojoは、7〜17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場です。2011年にアイルランドで始まり、世界では70カ国・1,200の道場、日本では全国に83以上の道場があります。沖縄県には、南風原・嘉手納・宮古島の3か所に道場が開設されています。CoderDojo で学べる内容は道場ごとに異なります。例えば、次の内容を学べる道場があります。Scratch, Hour of Code,HTML, CSS, JavaScript,PHP, Python, Ruby, Unity,Arduino, Raspberry Pi など。道場の運営は、基本的にボランティアで成り立っており、子どもたちは、無料でプログラミングやテクノロジーに触れることが出来るようになっています。例えば、南風原のCoderDojoは、協力企業から減価償却済みのPCを30台無償で譲り受け、PCを持っていない子どもたちでも通えるように、プログラミング環境を整えており、ほぼ毎週、週末の土曜日に10名前後の子どもたちがプログラミングを学びに来ています。なお、全世界のCoderDojoの運営者は、Facebook上のコミュニティでつながっており、インターネット上で、国境を越えて、プログラミングイベントなどを開催する素地が整っています。

(参考)行政が後押しするCoderDojo
コーダー道場こだいら 東京都小平市教育委員会が支援
https://coderdojo-kodaira.github.io/spcourse4adults2016.html

4.環境問題について

環境問題への対応は、私達の世代が次の世代へ、より良い形で「地球環境」を引き継いで行く為の極めて重要な取組みです。沖縄県においても「第2次沖縄県環境基本計画」において基本的な取組みの枠組みを示し、多くの施策が展開されています。私達中小企業家同友会も①環境保全型企業づくり、②環境ビジネスと市場創造、③環境保全型・循環型地域づくりを基本に、環境問題に取り組んでいます。 つきましては、これらを踏まえ、以下のことについて要望・提言します。

①沖縄県環境基本計画の実現に向けて、県内企業としての役割を果たしていくため、以下のことを要望・提言します。ア)同計画の認知度を高め、理解を深めるための学習の機会を提供すること。イ)沖縄の産業まつりにおいて沖縄県のブースを設置し、積極的に同計画のPRを行うこと。

②中小企業家同友会では、再生可能エネルギー中心の経済へ転換し、新たな中小企業仕事と雇用を生み出し、持続可能な地域づくりをめざす「エネルギーシフト」(エネルギーの地消地産)の実現に向けて、全国で取り組みを進めています。沖縄県内においてもバイオマス発電等の分野で参画するチャンスを探っていきたいと考えています。会員アンケートにおいてもエネルギーシフトを積極的に推進してほしいという意見が多く出されているため、以下のことを要望・提言します。

ア)沖縄県と沖縄総合事務局の再生エネルギー活用に関する方針、取り組み姿勢などの説明会を開催し、民間事業者の参画機会の創出を図ること。イ)エネルギーシフトに関連する新しいビジネスの創出に繋がる仕組みづくりに取り組むこと。

③生ごみ等の再資源化、資源循環の取組について、会員アンケートでは、許可業者と契約を結んで収集・運搬して貰っているとの回答が66.7%に止まっており、家電4品目及びパソコンがリサイクル(有料)の対象である事を理解して処分しているが41.0%となっています。更には事業系ごみを自治体指定のごみ袋で捨てているが9.0%もいる状況です。これは適切な分別、処理に関する理解が周知されていないと判断します。これは私達企業側の問題でもありますが、これが徹底できれば、上記と関連して新事業創出(再資源化ビジネス)に繋がるような展開が期待できますので、以下のことを要望・提言します。

生ごみ等の再資源化、資源循環の取組を前進させるため、適切な分別、処理に関する理解について、沖縄県が各自治体を誘導するようなリーダーシップを発揮すること。

④沖縄県環境基本計画を推進するにあたり、県内企業における環境マネジメントシステムやエコアクション21の推進を図っていく必要があります。そのためには、沖縄県や関係団体の協力体制の強化が求められます。会員アンケートでは、環境マネジメントシステムやエコアクション21への取り組みを行っているという企業は23.1%(27社)に留まっており、周知・広報次第で更なる拡大が期待されます。設計事務所等の評価制度におけるQMS(品質マネジメントシステム)、EMS(環境マネジメントシステム)の加点は非常に有益な施策でした。これらを踏まえ、以下のことを要望・提言します。

ア)エコアクション21についても現在の5点からISOの半分程度の7点へ引き上げを行うこと。
イ)設計事務所等の評価制度におけるQMS(品質マネジメントシステム)・EMS(環境マネジメントシステム)の加点を土木コンサルタント等へも拡大すること。